ギャルは聖女で世界を救う! ―王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!―
 ディルは熱っぽい息を吐き、何かを思い出すような、遠い目をする。身体が弱っているせいか、普段は話さないことを話している気がしないでもないが、なぜか昔語りを止めることができなかった。

「小さな領地の貴族であれば、よくあることだ。身体が弱かった私に、両親は冷たかった。私はいつも、あの家を脱出することばかり、考えて、……必死で知識を詰めこみ、首都の親戚を頼って、絶縁して……」
「……ディルはすっごく頑張ったんだね」
「頑張った、か。言われてみれば、確かにそうだな……。あの時は必死すぎて、よくわかっていなかったが……」

 ぽつりぽつりと話していたディルの受け答えが、少しずつ遅くなっていく。どうやら、先ほど飲んだ薬のせいで眠くなってきたらしい。
 子供を安心させるように、エミは子守歌を歌いながら、ディルの胸をトン、トン、と優しく叩いた。心地よい振動に、ディルの意識が遠くなっていく。

「……そういえば、風邪をひいても、看病されたことは一度もなかったな……。風邪をひいたときには、ずっとひとりで耐えるしか出来なかった」
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