スイート×トキシック
「俺はいつでも本気だよ。いまだって、芽依ちゃんとふたりで話せてすげー嬉しいと思ってる」
「そういうことは本当に好きな人に言いなよ」
「……だから、言ってんじゃん」
真剣な表情と声で告げるも、冗談で済ませようと芽依は笑う。
「……えー? もう。朝倉くん、わたしのこと好きすぎ」
「そうだよ。俺、本当に芽依ちゃんのことが好き」
さすがに彼女の顔から笑みが消える。
動揺したみたいに瞳が揺らいだのを見て畳みかけた。
「友だちだなんて思ってない。そんなふうに諦められない」
「朝倉、くん……」
「……分かってる。困らせてるよね」
眉を下げて儚く笑ってみせる。
息をするように嘘を重ねていく。
「でも、迷って欲しいって言ったら……怒る?」
完全に揺らいだのが分かった。
それでも、断ったり流したりする隙を与えないように言葉を繋ぐ。
「ねぇ、一緒に帰ろ。もっと芽依ちゃんのこと知りたい」
はにかむように笑いかけた。
その“秘密”、いつか自分から打ち明けてくれるのかな。
それともバレなきゃいいと思ってる?
ふたりきりの世界で俺に心から大事にされて、好かれて、愛されたら、芽依はどんな反応をするんだろう。
いまは颯真に対して異常なほどの想いを抱いているかもしれないけれど────。
(大丈夫、俺がぜーんぶ上書きしてあげるからね)
そのとき、ふいに颯真が現れたのは完全に想定外だった。
「日下……って、おまえもいたのか」
「先生」
芽依の声が硬くなり、表情が強張る。
俺といるとこ、見られたくないんだ。
俺も一緒にいるとこ、いまは見られたくなかった。
「やっほー。あ、先生も飲む?」
内心の動揺をひた隠しに、普段通りを装って首を傾げる。
大丈夫。
このあと芽依が消えたって、颯真には俺を疑えない。
何ならいっそ、バレたっていい。彼になら。
颯真のためにしていることなんだから、喜んでくれるはず。
「遠慮しとく。俺は甘いの苦手だから」
「そっかー」
知ってる、と心の中でつけ足す。
昔からそうだ。
「そもそもおまえの飲みかけだろ、それ」
「えー、何か問題ある?」
くす、と思わず笑ってしまった。
兄弟なんだから別にいいだろうに。
なんて、普段はその関係性を呪っているくせに都合がいい。
昇降口のあたりで、俺は「あ」と立ち止まる。
「ごめん、忘れものしちゃった。先行ってて」
一緒に学校を出る瞬間を防犯カメラの映像に残さないため、そして車を動かす時間を稼ぐために嘘をついた。
「忘れもの? わたしも一緒に取りに戻るよ」
「ううん、大丈夫。校門出たとこの木の下で待っててくれる? すぐ追いつくから」