【受賞】コワくてモテる高杉くんはせわが好き。
 ○学校・教室
 黒板に中間テストの順位表が張り出されている。高杉理人は全教科上位に名前が記されている。唯一、数学だけ理人に勝ったせわは、ひそかにガッツポーズする。

 せわ(数学だけだけど勝った……)
 男子生徒「高杉すげー。あの見た目で頭もいいとかずるいよなー」
 女子生徒「勉強教えてほしー」

 ガラリと引き戸が開き、理人が教室に入る。

 女子生徒「あ、噂をすれば」

 理人はテストの順位表は素通りで席に座り、本を読み始める。
 今日の彼も顔に傷をいくつも作っている。猫のミアに引っかかれた傷なのだが、生徒たちは喧嘩でできた傷だと勘違いしている。

 女子生徒1「また喧嘩してきたのかな?」
 女子生徒2「治安悪〜。でもそこが好き」
 女子生徒3「安定にコワかっこいい。てか顔がいい」

 噂話を聞きながらせわは苦笑する。

 せわ(またミアちゃんに引っかかれたんだ……)


 ○せわの家・せわの部屋(放課後)

 ベッドに横になりながら、本を読むせわ。本を顔の上に乗せて、はぁとため息をつく。

 せわ(最近……)
 せわ(理人が好きすぎて辛い……)

 せわは、『大丈夫。俺は傍にいるから』と理人に言われたことを思い出して赤面する。

 せわモノローグ(理人が好きだって気づいてから)
 せわモノローグ(それを意識すればするほど)
 せわモノローグ(些細な仕草にどきどきしてしまう)

 そのとき、スマホの通知がピコンと鳴る。
 理人とのチャットに、『今日ご飯作りに行こっか?』とメッセージが来ている。せわは『ありがとう、待ってます』と返信する。

 せわは指が震えているのを見つめる。

 せわ(今まではこんなことなかったのに……。メッセージ一つで緊張する……)

 スマホをベッドの上に置いて、また小さく息を吐く。
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