惚れた弱み
菜々とのやり取りの後、即、夏樹に電話を掛けた。
『え、花火大会?俺は美桜と行く予定だけど。』
「…だよな。」
うーんと唸って、一緒に行って欲しいと誘うか一瞬迷った。
『え、もしかして俺と2人きりで行きたいとか言い出すんじゃ…』
「いや、なんでだよ。誰が得するんだ、それ。」
『じょーだん。なに、橋本ちゃん誘わねーの?』
「いや、誘ったんだよ。さっき。」
『さっき!?リアルタイムな報告どーも。2人で楽しんできな。』
「ちょ、待て!違うんだ…」
『何が?』
うーんと悩んでから、博孝は口を開いた。
「ごめん、夏樹に誘われたことにしたんだ。工藤ちゃんも行くから、一緒に行かないかって言って…」
『マジかよ!』
「ごめん…。だって、工藤ちゃんいるって言わないと、最初から2人きりとか、どう考えても距離詰めすぎだろ?」
『まあ、確かに。美桜がいるって言った方が橋本ちゃんも返事しやすいよな。』
「だろ?だからさ、ほんっっとうに申し訳ないけど、4人で一緒に行ってもらえないかな?あっちに着いたら、お互い別行動ってことにして…。」
『おう、いいよ。協力する。美桜にも言っとく』
「夏樹ー!マジでありがとう!ごめんな、デートの邪魔するようなこと…」
『ホントだよ!ここまでするんだから、橋本ちゃんと上手くやれよ~?』
「うん、頑張るよ。その日告白もする。」
『…マジか。ガチだな。』
「だから最初からガチだって。」
博孝はふと、菜々と初めて会った時のことを思い出していた。