惚れた弱み


菜々とのやり取りの後、即、夏樹に電話を掛けた。


『え、花火大会?俺は美桜と行く予定だけど。』


「…だよな。」

うーんと唸って、一緒に行って欲しいと誘うか一瞬迷った。


『え、もしかして俺と2人きりで行きたいとか言い出すんじゃ…』


「いや、なんでだよ。誰が得するんだ、それ。」


『じょーだん。なに、橋本ちゃん誘わねーの?』


「いや、誘ったんだよ。さっき。」


『さっき!?リアルタイムな報告どーも。2人で楽しんできな。』


「ちょ、待て!違うんだ…」


『何が?』


うーんと悩んでから、博孝は口を開いた。


「ごめん、夏樹に誘われたことにしたんだ。工藤ちゃんも行くから、一緒に行かないかって言って…」


『マジかよ!』


「ごめん…。だって、工藤ちゃんいるって言わないと、最初から2人きりとか、どう考えても距離詰めすぎだろ?」


『まあ、確かに。美桜がいるって言った方が橋本ちゃんも返事しやすいよな。』


「だろ?だからさ、ほんっっとうに申し訳ないけど、4人で一緒に行ってもらえないかな?あっちに着いたら、お互い別行動ってことにして…。」


『おう、いいよ。協力する。美桜にも言っとく』


「夏樹ー!マジでありがとう!ごめんな、デートの邪魔するようなこと…」


『ホントだよ!ここまでするんだから、橋本ちゃんと上手くやれよ~?』


「うん、頑張るよ。その日告白もする。」


『…マジか。ガチだな。』


「だから最初からガチだって。」


博孝はふと、菜々と初めて会った時のことを思い出していた。

< 22 / 60 >

この作品をシェア

pagetop