惚れた弱み
菜々が他の友達3人と一緒に、自分たちの教室に来たあの日。
菜々しかいなかったんじゃないかと思うくらい、彼女だけに視線を奪われた。
綺麗なストレートの黒髪ボブ。
落ち着いた雰囲気があるかと思えば、美桜と話す時にあわあわと慌てた様子も見せる。
――可愛い。
経験したことのない感覚だった。一瞬で、菜々に惚れた。
――これがいわゆる一目惚れってやつか。
クラスメイトに呼ばれ、夏樹が彼女のもとに近づいていく。
しばらく話していたかと思えば、走って帰った友達を追いかけて、すぐに消えてしまった。
「夏樹!さっきの子たち、誰?」
こちらに戻ってきた夏樹に、ひそひそ声で話しかける。
「ん?ああ、1年の子達らしい。」
「黒髪ボブの子も、夏樹狙い?」
「黒髪ボブ?いたっけか。」
「いただろ!走って帰っていった子を追いかけてた…」
「ああ、あの子ね。俺狙いだったら先に教室に戻ったりしないと思うし、違うんじゃね?]
「そうか…うーん。」そう言って頷いた博孝。
そんな博孝に、夏樹が柄にもなく少しばかり興奮しながら言った。
「あ、最初に走って帰ってった子。あの子、昔近所に住んでた子でさ、めっちゃ俺好みの女になってた。」
「マジか!じゃあ、知り合いってことだよな?あの黒髪ボブの子の名前、聞いといてくれない?」
「え、なんで?」
夏樹が首を傾げて尋ねる。
博孝は少し顔を赤らめながら言った。
「人生で初めて、一目惚れした。」