惚れた弱み
行きましょ、という菜々を、博孝が引き止めた。
「いいよ、見ていこ。」
そう言うと博孝は、先に進んで振り返ってこっちを見ている夏樹に、合図を送って、先に行くよう促した。
――よし、これでようやく二人きりになれた。
「すみません、気遣っていただいて。」
そう菜々に言われ、慌ててフォローする。
「いや、俺が橋本ちゃんと一緒に見たかっただけだから。あ、でもアクセサリーだから工藤ちゃんと見たかった?…気が利かねーな俺。」
――いや、でもこうでもしないといつまでも2人きりにはなれないし…。
反省している自分の横で、菜々がふるふると頭を振ってフォローしてくれた。
「いえ、嬉しいです。」
――マジで!?俺と2人きりでもいいってこと?
「そう?ならよかった」
平然を装ってそう返してみるが、心の中では飛び上がりそうなほど喜んでいる自分がいた。
ずらりとアクセサリーが並ぶ中で、菜々は1つ1つじっくり眺めながらどれを買うか悩んでいる。