惚れた弱み
「お、こんなのどう?」
「わ!かわいい〜!」
思った以上にいい反応。自分が良いなと思ったものを菜々にも良いと思ってもらえて、素直に嬉しかった。
「そ?じゃあこれ俺からプレゼントしてもいい?」
菜々の満面の笑顔を見たら、プレゼントしたくてたまらなくなった。
「え!?いいんですか?」
ますます嬉しそうに笑う菜々。
――やった。ついに橋本ちゃんの一番かわいい顔を見れた。
いつも相良に向けていた、取り繕っていない、嬉しそうな笑顔。
それを自分に向けてもらえて、これ以上の幸せは無かった。
支払いを済ませ、タグだけ切ってもらったブレスレットを、菜々の左手首に着ける。
「ほら、手出して。…橋本ちゃん、手首ほそっ」
ほんの少しだけ、ブレスレットを取り付けながら、ワザと菜々の手に触れてみた。
その柔らかさに、ドキドキした。
「お、いいね。似合ってるよ。」
ブレスレットを取り付けた後、博孝はそう言った。
「先輩はブレスレットとか、つけないですか?」
――ミサンガはしたことあるけど、さすがにブレスレットは…
ふと、菜々を試す言葉が浮かんだ。
「橋本ちゃんとお揃いならつけるけどね。」
そう言った後、恥ずかしくなって「じょーだん」と言って誤魔化す。
すると菜々は、博孝の言葉を信じたのか「じゃあこれっ」と言ってブレスレットを取って店員にお金を渡した。