惚れた弱み


「お、こんなのどう?」


「わ!かわいい〜!」


思った以上にいい反応。自分が良いなと思ったものを菜々にも良いと思ってもらえて、素直に嬉しかった。


「そ?じゃあこれ俺からプレゼントしてもいい?」


菜々の満面の笑顔を見たら、プレゼントしたくてたまらなくなった。


「え!?いいんですか?」


ますます嬉しそうに笑う菜々。


――やった。ついに橋本ちゃんの一番かわいい顔を見れた。


いつも相良に向けていた、取り繕っていない、嬉しそうな笑顔。


それを自分に向けてもらえて、これ以上の幸せは無かった。


支払いを済ませ、タグだけ切ってもらったブレスレットを、菜々の左手首に着ける。


「ほら、手出して。…橋本ちゃん、手首ほそっ」


ほんの少しだけ、ブレスレットを取り付けながら、ワザと菜々の手に触れてみた。
その柔らかさに、ドキドキした。


「お、いいね。似合ってるよ。」


ブレスレットを取り付けた後、博孝はそう言った。


「先輩はブレスレットとか、つけないですか?」


――ミサンガはしたことあるけど、さすがにブレスレットは…


ふと、菜々を試す言葉が浮かんだ。


「橋本ちゃんとお揃いならつけるけどね。」


そう言った後、恥ずかしくなって「じょーだん」と言って誤魔化す。


すると菜々は、博孝の言葉を信じたのか「じゃあこれっ」と言ってブレスレットを取って店員にお金を渡した。

< 31 / 60 >

この作品をシェア

pagetop