惚れた弱み
「好きなの?…相良君のこと。」
そう言った瞬間、菜々は驚いて大きく目を見開いた。
心臓がドクンと跳ね上がる。
――やっぱりそうか。彼女と一緒にいる相良君を見ただけで、橋本ちゃんの笑顔も、全部かっさらわれた。
「相良君が彼女と歩いてるの、さっき見たんだ。だから、もしかしたら橋本ちゃんもそれ見て、今頃泣いてるんじゃないかと思って、すぐに追いかけた。」
「…どうして、私の好きな人が相良君だって、知ってるんですか?」
――ああ、俺がどんなに頑張っても、橋本ちゃんの好きな人は相良君なんだね。
悔しい。
ほんの数分前まで幸せだった気持ちが、一気に萎んだ。
「ごめん。陸上の練習をする時に、橋本ちゃんのことを見てたら、分かっちゃった。サッカー部で、ビブスに『相良』って書いてある男子と話してる時の顔が、いつもすごく嬉しそうだった。それに、夏樹からも、橋本ちゃんが相良って子と一緒に帰ってて楽しそうだったって聞いて。」