惚れた弱み
黙っている菜々に、博孝は言葉を続けた。
「…相良君と話す時、橋本ちゃんはいつも、俺の前では見せない顔で相良君と笑い合ってた。…ホント、毎回嫉妬でどうにかなりそうだったよ。」
「嫉妬って…」
「ねぇ、なんで泣いてないの?橋本ちゃんの好きな人なんでしょ?彼女いるの知って、1回も泣いてないのはなんで?」
「それは…」
「橋本ちゃん、それって本当に好きなの?俺なら絶対、悔しくて、悲しくて泣いてるよ。」
――ここまで言っても分からないのかよ。そんなに俺って眼中にないのかよ。
思わず語調が強めになった。でも、それを菜々がどう感じ取るかなど、考える余裕はもうなかった。
「…泣けよ。泣けないくらい、相良君のこと本気じゃないんなら、俺のこと見ろよ。相良君に向けてる橋本ちゃんの笑顔、俺に見せてよ。なんで俺じゃダメなんだよ。」
「先輩…?」
「橋本ちゃん。」
名前を呼ばれて博孝の顔を見上げた菜々は、戸惑いの表情を浮かべている。
――俺の気持ち、気づいて。
「…好きだよ。橋本ちゃんのことが、好きだ。初めて見た時から、ずっと。」
「…え?」