惚れた弱み
何が起きたか分からないといった表情の菜々。
想定内ではあったが、実際にそんな顔をされてしまうと、胸がギュッと締め付けられるように苦しい。
「やっぱり、気付いてなかったんだ?俺の気持ち。」
一瞬固まったが、ゆっくり頷いた菜々。
――ダメか。全然気づいてもらえてなかった。
何をしても、自分を印象付けることはできなかったのだ。
薄暗い月明かりとぼんやりした街灯の光に照らし出された菜々の顔は、少し悲しげだ。
そのまま菜々の顔を見つめ、矢嶋は言葉を続けた。
「実はさ、一目惚れだったんだ。橋本ちゃんが、クラスメイトの3人と一緒に、夏樹を見に来た時『めちゃくちゃ可愛い子がいる』って思って。その時からずっと、好きだったよ。」
「そんな……先輩…私…」