惚れた弱み
そして2月。
博孝は久しぶりに学校に登校していた。
――橋本ちゃん、元気かな。
そう思って廊下を歩いていた矢先、ちょうど通りかかった調理室から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「…クラスメイトです。」
ドキッとした。
菜々の声だ。
何やら、マネージャー同士で会話をしながら何かを作っているようだ。
「そうなんだ!?じゃあ、今は特に誰も好きな人はいないの?」
「好きな人…」
――嫌だ。聞きたくない。どうせ、相良君の名前が出るんだから。
「橋本ちゃん?」
廊下と調理室を隔てる窓から顔を覗かせ、思い切って声を掛けてみた。
振り返った菜々。
久々に見る彼女の顔は、驚いたような、でも泣きそうな、複雑な表情になっている。
――ああ、こんなに可愛かったっけ。こんな表情すら可愛いと思う自分はホント、とことん橋本ちゃんに弱いな。
そう思った気持ちを誤魔化すように、とりあえず話を続けてみる。