惚れた弱み


「で、どうしたの?」


本題は何だろうか。わざわざ電話をかけてきてくれるなんて。これは期待してもいいかもしれない。


『先輩、大学合格したんですよね?おめでとうございます。』


ずっと欲しかった言葉。昨日からずっと、菜々からこの言葉をもらいたいと願っていた。それが早速叶うなんて…。


「ありがとう!橋本ちゃんにそう言ってもらえると、マジで嬉しい。頑張った甲斐があったよ。」


嬉しかった。菜々が自分の大学受験の結果を気にかけてくれたという事実だけで、幸せな気持ちになれた。


『あの…どこの大学に行くんですか?県内と東京と、どっちも受かったってことですよね…?』


そう尋ねられ、県内、と答えようとしたのをやめた。


「そうそう。…東京に行くよ。」


『そう…ですか。』


――がっかりしてる?どうなんだ?


「…寂しい?」


本当に、こういうところは性格が悪い。嘘までついて、菜々の気持ちを確認しようとするなんて。


反応が返ってこない、2,3秒がとても長く感じられた。


そして返ってきた言葉は…

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