惚れた弱み


駅前の広場に着くと、まだ菜々の姿は見えなかった。


――ホントに会えるんだよな?


そんな不安もありつつ、駅前広場の端に立って、菜々を待つことにした。


「矢嶋先輩?」


思ったより早く、そう声をかけられて振り向くと、菜々がそこに立っていた。


白のニットに、紺の花柄ロングスカートを合わせている。


――俺に会うだけで、こんな綺麗な格好をしてきてくれたのか?


「ごめんなさい、私の方が家近いのにお待たせして…。」


そう話す菜々に見惚れながらも、言葉を返した。


「いや、大丈夫。たまたまいいタイミングで電車が来て、思ったより早く着いただけだから。」


そう言って、菜々の目を見つめて言った。


「…今日も綺麗だね。可愛いし、綺麗。」


「…ありがとうございます。」


少し恥ずかしそうに照れる菜々。


そんな様子が可愛くて仕方なかった。


ニヤケそうになるのをぐっと抑え「ちょっと歩こうか」と言って、駅前にある大きな公園に向かった。

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