肉を斬らせて骨を断つ

冴の髪を染めるのを手伝い、終わって鏡を覗く。

「なんか」
「え、染め残しある?」
「受験の時を思い出す」

振り向いた冴が怪訝な顔をした。

「なにそれ、今のあたしより二年前のあたしの方が良いってこと?」
「どっちも可愛い」
「……染め残しは?」
「ない」

純玲は前に移動し、緩く腕を広げる。
条件反射のように冴がそこへ収まった。

「ありがとう」

そう言うと、もぞと顔だけを動かし、冴が見上げる。

「なにが?」
「生きていてくれて」

泣きそうな顔で、少しはにかんだ。

あの時、きっと、胸を射抜かれたのだ。






20230820
おわり。

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