嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~
「あら? その髪飾り、とても素敵ね。お姉様にはもったいないわ」

 わかってしまう。
 コルディアは髪飾りを奪ってくると。

 小さいころからずっとそうだった。
 実母が病死し、義母に代わったあの日から──ずっとマイアは奪われ続ける日々で。
 すべて妹のものだったのだ。

 今だって変わらない。
 結局、マイアはコルディアの前で否定することができない。

「もらうわね」

 ゆっくりと、コルディアの手がマイアの頭に伸びる。
 髪飾りまであと少し、手が届く直前で。


 パシリ、と乾いた音が響いた。


「俺の妻に何をしている」

 コルディアの手を払いのけた、美しく白い手。
 いつしか前に立っていたジョシュアはそっとマイアを抱き寄せる。

「ジョシュア、様……」
「大丈夫だ。俺がついている」

 怒気を湛えた瞳で、ジョシュアはコルディアを睨んだ。
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