嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~
 だが、ここは本音を言ってもらわなければ。
 その口で、大勢の貴族の前で、自分の意見を明らかにする。
 この過程を踏むことで、真の意味でマイアは解放される。

「……マイア。俺がいる。もう二度と君を手放さないと、あの日言ったことは忘れてないだろう? ここで君が何を言おうとも、俺は君に寄り添おう。
 俺は知っている。君の朗らかな笑顔と、どこまでも素敵な心根を。だから君の思うがままに、言葉を紡いでみてくれ」

 ゆっくりと、落ち着いた調子でジョシュアは語りかける。
 そうだ。彼はマイアを守ると言ってくれた。
 だからコルディアを恐れる必要はない。

 マイアはすでに──ハベリア家の者ではない。
 エリオット家の一員なのだから。

「私は、実家のハベリア家でひどい待遇を受けていました。コルディアからは毎日のように暴言や暴行を受け、家から出してすらもらえませんでした。コルディアを庇うために私は悪い噂を社交界に流され、そのせいで苦労していたこともあります」
「お、お姉様!? 何を言っているの!?」

 言葉は止まらずに出た。
 一度出ると、もう止めることはできなかった。

「でも、そのおかげで……私はジョシュア様と出会えたのです。私はもう、苦しみたくありません。ですから、ジョシュア様……」
「わかっている。コルディア・ハベリア。君は招待状を持っていないな?」

 もうコルディアを視界に入れたくなかった。
 ジョシュアもそんなマイアの意を汲み、早々にコルディアを退場させることにした。
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