嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~
 肩を震わせ、怒りと理不尽に悶えるコルディア。
 すべてマイアのせいだ。
 だが、彼女はジョシュアの傍でずっと守られていた。

 このやり場のない怒りをどうすればいいものか。
 目を血走らせて周囲に視線をめぐらせると、多くの貴族が哀れみの感情をもってこちらを眺めていた。

 もちろん、その中にはギャスパルの姿もある。
 今の彼女は冷静ではなかった。
 ギャスパルの顔を見ただけで怒り心頭に発し、抗いがたい激情が走る。彼が少し庇ってくれれば、こんな事態にはならなかったのに。

「どうして……っ!」

 傍のテーブルに置いてあったワイングラスを掴み、コルディアは走り出す。
 衝動的な行動だった。

 ワイングラスをギャスパルに投げつける。
 後先考えない行動を取ってしまうのはいつもの癖で。

「──!」
「危ない!」

 まっすぐに投擲されたガラスの凶器。
 それを受けたのはギャスパルではなく……咄嗟に前へ出たジャック王子だった。
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