嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~
 コルディアが投げつけたワイングラス。
 それはジャックの頭に当たり、彼の白い礼服を紫色に染め上げる。

「う、そ……」

 コルディアは目を見開く。
 衝動的な行動で、意識を取り戻したときにはすでに遅かった。

 公爵家のギャスパルに対する不敬でも、相当な問題になる。
 ましてや王子に怪我を負わせるなど。
 一家が潰されてもおかしくはない。

「貴様、王子になんたる不敬を!」
「誰か、この娘を捕らえろ!」

 周囲の近衛兵が一斉に動き出す。

「ち、ちが……私はそんなつもりじゃ……」

 弁明も虚しく、問答無用に彼女は組み伏せられる。
 マイアとジョシュアも、目の前で起こった光景に驚愕していた。

「ジャック様、大丈夫ですか!?」

 マイアは慌ててジャックに駆け寄る。
 ワイングラスを頭にぶつけられたというのに、ジャックは朗らかに笑った。

「うん、大丈夫。それよりもギャスパルは無事かい?」
「は、はい……! しかし殿下、傷が……!」

 ジャックの額からは血が出ていた。
 どうやらガラスで切ってしまったらしい。

 ギャスパルは慌ててハンカチをジャックに手渡した。

「ありがとう。……でも、これは必要ないかも。なあジョシュア。君の奥さんの秘密、ここで皆にバラすのはどうだろう?」
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