嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~
 マイアの秘密──それは「おまじない」以外に考えられなかった。
 たしかに、おまじないを使えばジャックの傷は治せる。
 しかし人前で披露してはいけないとも言われているのだ。

 こんな大勢の貴族が見ている前で使えば、瞬く間に噂は広がるだろう。

「ふむ……こうなった以上は、例の能力を見せておいた方がいいかもしれんな」
「ジョシュア様、それはどういう意味ですか?」
「今回の一件で、ハベリア家は取り潰されるだろう。王族への不敬、及び傷害はさすがに死活問題だからな。そうすれば……俺とマイアの婚姻に文句をつける者も出てくるだろう。だから、君自身に……ハベリア家の血筋ではなく、マイアという人間に価値があると示すべきだと。ジャックは言いたいのだろうな」

 マイアは得心がいった。
 正直、ハベリア家で育ってきた彼女でも、ハベリア家に対する感謝や哀れみはない。
 だから自分をハベリア家から切り離し、エリオット公爵家に移るという意味でも……この過程は必要だろう。

「わかりました。では、よろしいですか?」
「ああ。君の優しさを、皆に見せてやるといい」

 ジョシュアに背を押されて、マイアはジャックに歩み寄る。
 そして屈んで、彼の額に手を当てた。

「失礼します」

 彼女が手をかざした部分にあたたかな光が宿り、ジャックの傷口を修復していく。
 周りの貴族は信じられない光景を目の当たりにしていた。
 もちろん、取り押さえられていたコルディアも同様に。

「な、なにそれ……お姉様がやってるの……?」
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