嫌われ令嬢が冷酷公爵に嫁ぐ話~幸せになるおまじない~
 今まで浮かべていた微笑も、今は本当の笑顔に変わって。
 花のような笑顔でジョシュアと踊る。

 楽団が奏でる音楽に足を合わせて。
 ジョシュアの動きに合わせて。
 練習したとおりに、いや練習以上に洗練された動きを。

(楽しい……!)

 心のままにダンスを披露する。
 貴族の人々は、美しいマイアとジョシュアの舞踏に釘付けになっていた。
 ジャックとエイミーに引けを取らない優雅さだ。

「マイア。今の君は……とても綺麗だ」

 ジョシュアは踊りながら囁いた。
 直球な誉め言葉も、今のマイアは受け止められる。
 彼の言葉は決して建前ではなく、本心なのだと。

「ジョシュア様もとても素敵です。こうしてあなたと踊ることが、私の幸せです」

 ハベリア家で絶望の只中を彷徨っていたマイア。
 自分がここまで幸せになれるなんて考えたことすらなかった。

 一生社交界に出ることもなく、家族の踏み台として生きていくのだと……ずっと思っていたのに。
 今は誰よりも幸福だと、高らかに断言できる。

 そんな自分を救ってくれたジョシュアに対して、あらんかぎりの感謝と愛情をこめて。
 彼女は踊り続けた。
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