後宮毒見師伝~正妃はお断りします~
王都で買い物
半刻後、宮女の服から私服に変わった夏晴亮は、初めての姿に驚いていた。横で馬星星が満足気な顔で頷いている。
「私の目に狂いは無かったわ。貴族の令嬢って感じ」
「私、こんな格好するの初めてです」
「そうなの?」
馬星星は夏晴亮の生い立ちを知らない。この顔面ならさぞかし出会った男を勘違いさせてきたのだろうと思っていたくらいだ。
「嬉しいです。素敵にしてくださって、有難う御座います」
今着ている服も馬星星のものだ。夏晴亮が持っている服はぼろぼろの一着しかない。馬星星が夏晴亮の手を取る。
「よし、行きましょ」
「はい」
外に出るには女官の許可がいる。二人で申請しに行くと、くれぐれも注意するようにと念を押された。
「私が田舎者だから心配してくださったのでしょうか」
夏晴亮が不安になっていると、馬星星に頭を撫でられた。
「違うと思うけど、そうね。亮亮は世間を知らないところがあるから、私がしっかり付いて守るわね!」
「有難う御座います」
先輩がいれば安心だ。二人は意気揚々と宮廷の大門を通り、王都へと繰り出した。
王都は歩いたことがある。さ迷い歩き王都に辿り着いて、宮女募集の看板を目にしたことでこうして充実した生活を送ることが出来るようになった。あの日を思い出し、感慨深くなる。
前回はお腹が空いてどうしようもなかったので、王都がどんなところまでかは見て回れなかった。しかし今回は違う。給与が入った袋を握り締める。
「亮亮は何を買うの?」
「あの、お恥ずかしいのですが、文字を読むのが苦手なので、子ども用の勉強道具を何か買おうかと」
夏晴亮なりに、自分にとっては日常でも、何も教養が無いことが当たり前ではないことを理解している。視線を合わせられないでいると、横から明るい声が返ってきた。
「あら、勤勉ね。素敵。じゃあ、勉強関連のお店に寄りましょ」
「はい」
ほっとした夏晴亮が馬星星に付いて歩き出した。
それにしても、右を見ても左を見ても様々な店が並んでおり、これがどこまで続いているのだろうと感心する。それだけ需要があるのだ。王都だけで夏晴亮が想像する以上の人が住んでいるに違いない。
「可愛らしいお嬢さん方、髪留めはどうです」
「また今度」
客引きを軽くあしらう先輩を夏晴亮が尊敬の眼差しで見つめる。彼女だけだったら、断れず何か買ってしまうかもしれない。馬星星が笑った。
「こんなの慣れよ」
「そうですか。勉強になります」
夏晴亮にとっては、毎日起きること全てが勉強だ。王都にどんな店があるのか説明を受けていたら、目当ての店が見えた。
「私の目に狂いは無かったわ。貴族の令嬢って感じ」
「私、こんな格好するの初めてです」
「そうなの?」
馬星星は夏晴亮の生い立ちを知らない。この顔面ならさぞかし出会った男を勘違いさせてきたのだろうと思っていたくらいだ。
「嬉しいです。素敵にしてくださって、有難う御座います」
今着ている服も馬星星のものだ。夏晴亮が持っている服はぼろぼろの一着しかない。馬星星が夏晴亮の手を取る。
「よし、行きましょ」
「はい」
外に出るには女官の許可がいる。二人で申請しに行くと、くれぐれも注意するようにと念を押された。
「私が田舎者だから心配してくださったのでしょうか」
夏晴亮が不安になっていると、馬星星に頭を撫でられた。
「違うと思うけど、そうね。亮亮は世間を知らないところがあるから、私がしっかり付いて守るわね!」
「有難う御座います」
先輩がいれば安心だ。二人は意気揚々と宮廷の大門を通り、王都へと繰り出した。
王都は歩いたことがある。さ迷い歩き王都に辿り着いて、宮女募集の看板を目にしたことでこうして充実した生活を送ることが出来るようになった。あの日を思い出し、感慨深くなる。
前回はお腹が空いてどうしようもなかったので、王都がどんなところまでかは見て回れなかった。しかし今回は違う。給与が入った袋を握り締める。
「亮亮は何を買うの?」
「あの、お恥ずかしいのですが、文字を読むのが苦手なので、子ども用の勉強道具を何か買おうかと」
夏晴亮なりに、自分にとっては日常でも、何も教養が無いことが当たり前ではないことを理解している。視線を合わせられないでいると、横から明るい声が返ってきた。
「あら、勤勉ね。素敵。じゃあ、勉強関連のお店に寄りましょ」
「はい」
ほっとした夏晴亮が馬星星に付いて歩き出した。
それにしても、右を見ても左を見ても様々な店が並んでおり、これがどこまで続いているのだろうと感心する。それだけ需要があるのだ。王都だけで夏晴亮が想像する以上の人が住んでいるに違いない。
「可愛らしいお嬢さん方、髪留めはどうです」
「また今度」
客引きを軽くあしらう先輩を夏晴亮が尊敬の眼差しで見つめる。彼女だけだったら、断れず何か買ってしまうかもしれない。馬星星が笑った。
「こんなの慣れよ」
「そうですか。勉強になります」
夏晴亮にとっては、毎日起きること全てが勉強だ。王都にどんな店があるのか説明を受けていたら、目当ての店が見えた。