後宮毒見師伝~正妃はお断りします~
誰の責任
「邪術!?」
任深持の後ろに控えた馬宰相が呟く。
「どうやら、李友望は邪術を研究して追放されたようですね。それで才国を恨んでいると……それにしても、二百五十年生きながらえるとは恐ろしい法術です」
「なるほど」
俄かに信じ難いが、目の前に証拠が立っているのだから信じるしかない。彼が李友望ということは護符の光が証明している。
──邪術は禁術だから、超国が独立した理由を記していなかったのか? 明確な理由があるなら、どこかに記録してあってもいいものだが。
「だから、才国と話し合うことはない。我の望みは才国が消えゆくこと。つまり、次期皇帝の貴様には死んでもらう」
「恨んでいるのは王族でしょう。才国の民に危害は加えないでください」
「断る」
やはり、命を狙ってきた相手と話し合いは難しかった。こちらはすでに負傷者も出ている。争いは避けられないか。その時、朱大将が前に飛び出た。
「李友望皇帝、才国大将朱卓凡が申し上げます! 任春初代皇帝に責任は御座いません。全ては我が先祖四大武将の一人、朱源が企んだことに御座います」
「…………」
李友望を覆う空気が変わる。才国軍は突然の告白に戸惑いながらも、構えを止めない。
「そのような戯言、誰が信じられるか」
「こちらに、貴方が書かれたお手紙が御座います。朱源は病の床に伏していた皇帝の身を案じ、自分自身の判断で皇帝の言葉だと貴方に伝えていたと、書物に残しております」
「朱源が……皇帝に伝えていなかっただと……!?」
李友望だけではなく、超国側の軍隊の陣形が僅かに崩れる。朱大将が結界の外に一歩踏み出した。
「朱卓凡! それでは貴方の身が!」
「馬牙風、いいんだ」
朱大将が馬から降り、地面に頭を擦り付ける。
「私の先祖が起こした罪、私が背負います。私の命を捧げます。ですからどうか、任深持様に手は出さないで頂きたい」
「朱卓凡!」
「結界から出ないでください!」
李友望も馬を離れ、朱卓凡の前に立つ。二人以外はどう出たらいいのか、様子を窺うことしか出来ない。
ふらりと足元が覚束なくなった李友望を超国の大将が支える。
「皇帝は知らなかった。だから許す……? そのようなことが出来るわけなかろう! 我の二百五十年間の苦しみはどうなる!!」
土が盛り上がり、浮き上がった土が集結し人型となった。土精霊がこちらへ歩いてくる。
「この男……人工精霊にまで手を出しているようです。邪術極まりないですね」
「仕方がない! 行くぞ! 朱大将、結界に戻れ!」
「は……はい!」
任深持の後ろに控えた馬宰相が呟く。
「どうやら、李友望は邪術を研究して追放されたようですね。それで才国を恨んでいると……それにしても、二百五十年生きながらえるとは恐ろしい法術です」
「なるほど」
俄かに信じ難いが、目の前に証拠が立っているのだから信じるしかない。彼が李友望ということは護符の光が証明している。
──邪術は禁術だから、超国が独立した理由を記していなかったのか? 明確な理由があるなら、どこかに記録してあってもいいものだが。
「だから、才国と話し合うことはない。我の望みは才国が消えゆくこと。つまり、次期皇帝の貴様には死んでもらう」
「恨んでいるのは王族でしょう。才国の民に危害は加えないでください」
「断る」
やはり、命を狙ってきた相手と話し合いは難しかった。こちらはすでに負傷者も出ている。争いは避けられないか。その時、朱大将が前に飛び出た。
「李友望皇帝、才国大将朱卓凡が申し上げます! 任春初代皇帝に責任は御座いません。全ては我が先祖四大武将の一人、朱源が企んだことに御座います」
「…………」
李友望を覆う空気が変わる。才国軍は突然の告白に戸惑いながらも、構えを止めない。
「そのような戯言、誰が信じられるか」
「こちらに、貴方が書かれたお手紙が御座います。朱源は病の床に伏していた皇帝の身を案じ、自分自身の判断で皇帝の言葉だと貴方に伝えていたと、書物に残しております」
「朱源が……皇帝に伝えていなかっただと……!?」
李友望だけではなく、超国側の軍隊の陣形が僅かに崩れる。朱大将が結界の外に一歩踏み出した。
「朱卓凡! それでは貴方の身が!」
「馬牙風、いいんだ」
朱大将が馬から降り、地面に頭を擦り付ける。
「私の先祖が起こした罪、私が背負います。私の命を捧げます。ですからどうか、任深持様に手は出さないで頂きたい」
「朱卓凡!」
「結界から出ないでください!」
李友望も馬を離れ、朱卓凡の前に立つ。二人以外はどう出たらいいのか、様子を窺うことしか出来ない。
ふらりと足元が覚束なくなった李友望を超国の大将が支える。
「皇帝は知らなかった。だから許す……? そのようなことが出来るわけなかろう! 我の二百五十年間の苦しみはどうなる!!」
土が盛り上がり、浮き上がった土が集結し人型となった。土精霊がこちらへ歩いてくる。
「この男……人工精霊にまで手を出しているようです。邪術極まりないですね」
「仕方がない! 行くぞ! 朱大将、結界に戻れ!」
「は……はい!」