白い菫が紫色に染まる時
私は、熱い想いを語る楓さんを見て微笑ましく思っていただけだったのだが、彼は私の無言をつまらないと捉えたようで、「ごめん。語りすぎた」と謝られた。

「いや、全然いいですよ。私も一応、ネットでここのこと調べてきたんですけど、やっぱりネットの情報だと分かりにくいことも多いし、楓さんが解説してくれると助かります。興味深いですし」

そう言うと楓さんは遠慮気味に続きを話だしたけれど、結局途中から抑えきれず生き生きとした口調になっていた。
美術館の中にも入って、館内全てを周ったころには「やっぱり、一緒に行く人、お前でよかったわ」と言われたので、楓さんも満足に楽しめたのだろう。
私も一緒に来れて良かった。

その後、夕飯の時間になったので、予定にはなかったが美術館内のレストランでご飯を食べることにした。
運ばれてきたご飯を食べながら、私は気になっていたことを聞いてみることにした。

「楓さん、今日は何で私を誘ったんですか?他にも一緒に行けるであろう人、たくさんいるじゃないですか?」
「お前が言ってるのは、一緒に行けそうな人じゃなくて行けそうな女子って意味だろ」

私は、女子というのが露骨だったので、わざわざ人って言葉に変えたのに・・・。

「まあ、そうですけど。一時期、たくさん来てたじゃないですか。あの女の子たちは?」

「いや~、多分今まで関係があった女子でこういうもの興味ある子いないし。俺が今日みたいに専門知識語り始めたら、引いちゃうと思う。というか、今はもうその人達とも縁切ったからな」

やはり、最近楓さんの家を訪れる女子がいないのは勘違いではなかった。

「何で急に縁切ったんですか?就活で忙しいからとか?」

人のプライベートな部分に深く踏む込みすぎた質問だったかと一瞬後悔したけれど、楓さんは特に気にする素振りを見せなかった。

「まあ、それもあるけど。最近、気づいたんだよね。俺さ、誰でもいいから愛をくれる人がただ欲しかっただけなんだなって」
「え・・・・?」

急に愛という大きな言葉が出てきて、理解が追いついていなかった。
ただ、楓さんが基本的には人に打ち明けることのないパーソナルな部分を話そうとしているのだということだけは、彼の面持ちでわかった。
そして、そこに踏み込むことを私は今許されている。
彼は話が長くなるんだけどと前置きをして話し始めた。
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