白い菫が紫色に染まる時
「俺が小さい頃に、母親が家を出て行ったんだよね。自分で言うのもあれだけど、俺の家めっちゃ金持ちなんだけどさ・・」
「親父は仕事ばっかりで、家にも全然帰ってこなくて、多分仕事って言って他の女のところに行ってたんだろうけど。そのことに、母親が耐えられなくて離婚届置いて消えた」
「俺は母さんっ子だったから、すごいショックで、それから本来母親からもっと貰うはずだった愛情を女子に求めるようになったんだと思う。ちょっと前に、テレビでやってたドキュメンタリー番組見てたらさ、俺と全く同じ境遇の人がいて。それでこれは俺のことだと思ったんだ。すごく腑に落ちたというか。そこで初めて、客観的に自分を見れたんだよね」
そう話した彼は自嘲気味に笑っていた。
その話を聞いて、納得した。
彼の家にやたら高そうなパソコンがあったこととか、彼の家に実家から送られてくる食材がやたらと高級品だったこととか・・・・。
「だからですか?実家から送られてくる食材に手付けたくないって言ってたの」
「ああ、せめてもの親父への反抗だよ。俺なんか結局親父の金がないと生きていけないんだけど、自分なりに何か反抗したかった。ただの自己満足」
そして、彼は寂しそうに自嘲した。
そんな彼を見て、私は元気づけたいという気持ちで思わず、言葉をかけていた。
「自己満足でも・・、いいんじゃないですか?その反抗が全く相手に伝わってなくても、それが自分のためになるなら」
この言葉は完全に人の受け売りだ。
あの雪の日に蓮くんに私は自分のためだけに生きていいと言われて、私は救われたのだ。
そして、心の靄が少し晴れてすっきりした。
「そうか・・・・。そうなのかもしれないな・・・・」
彼がこの言葉をどう受け止めてくれたのかわからないけど、先ほどまで全く手を付けていなかったパスタを彼は勢い良く啜り始めたのできっと、彼に届いたのだろう。
「お前さ、俺のこと嫌いだっただろ。まだ本当に最初の頃」
突然、彼が聞いてきた。
「え、まあ・・・。気づいてたんですか?最初の頃は、楓さんのこと女の人をとっかえひっかえ連れ込む性欲魔人だと思ってました」
正直なことを言うか迷ったがこの際だから言っておくことにした。
「なんだそれ」
「まあ、今は良い人だと思ってますよ」
「良い人か・・・」
そう楓さんが寂しそうに呟いた。
お会計をしようとしたとき、楓さんが私の分まで払おうとしたが、私は止めた。
彼言わく、男が女に奢るのは当たり前らしい。
でも、私は女だからといって奢ってもらう義理はないと断った。
それでも、彼は納得していないようで粘っていた。
「いや、でも今日は俺の趣味に付き合ってもらったし」
「楓さんの趣味に付き合って来たわけじゃないですよ。私も楽しんでましたから」
結局、私の粘りに負けたのか、自分の分は自分で払うことになった。
「親父は仕事ばっかりで、家にも全然帰ってこなくて、多分仕事って言って他の女のところに行ってたんだろうけど。そのことに、母親が耐えられなくて離婚届置いて消えた」
「俺は母さんっ子だったから、すごいショックで、それから本来母親からもっと貰うはずだった愛情を女子に求めるようになったんだと思う。ちょっと前に、テレビでやってたドキュメンタリー番組見てたらさ、俺と全く同じ境遇の人がいて。それでこれは俺のことだと思ったんだ。すごく腑に落ちたというか。そこで初めて、客観的に自分を見れたんだよね」
そう話した彼は自嘲気味に笑っていた。
その話を聞いて、納得した。
彼の家にやたら高そうなパソコンがあったこととか、彼の家に実家から送られてくる食材がやたらと高級品だったこととか・・・・。
「だからですか?実家から送られてくる食材に手付けたくないって言ってたの」
「ああ、せめてもの親父への反抗だよ。俺なんか結局親父の金がないと生きていけないんだけど、自分なりに何か反抗したかった。ただの自己満足」
そして、彼は寂しそうに自嘲した。
そんな彼を見て、私は元気づけたいという気持ちで思わず、言葉をかけていた。
「自己満足でも・・、いいんじゃないですか?その反抗が全く相手に伝わってなくても、それが自分のためになるなら」
この言葉は完全に人の受け売りだ。
あの雪の日に蓮くんに私は自分のためだけに生きていいと言われて、私は救われたのだ。
そして、心の靄が少し晴れてすっきりした。
「そうか・・・・。そうなのかもしれないな・・・・」
彼がこの言葉をどう受け止めてくれたのかわからないけど、先ほどまで全く手を付けていなかったパスタを彼は勢い良く啜り始めたのできっと、彼に届いたのだろう。
「お前さ、俺のこと嫌いだっただろ。まだ本当に最初の頃」
突然、彼が聞いてきた。
「え、まあ・・・。気づいてたんですか?最初の頃は、楓さんのこと女の人をとっかえひっかえ連れ込む性欲魔人だと思ってました」
正直なことを言うか迷ったがこの際だから言っておくことにした。
「なんだそれ」
「まあ、今は良い人だと思ってますよ」
「良い人か・・・」
そう楓さんが寂しそうに呟いた。
お会計をしようとしたとき、楓さんが私の分まで払おうとしたが、私は止めた。
彼言わく、男が女に奢るのは当たり前らしい。
でも、私は女だからといって奢ってもらう義理はないと断った。
それでも、彼は納得していないようで粘っていた。
「いや、でも今日は俺の趣味に付き合ってもらったし」
「楓さんの趣味に付き合って来たわけじゃないですよ。私も楽しんでましたから」
結局、私の粘りに負けたのか、自分の分は自分で払うことになった。