白い菫が紫色に染まる時
「それなら、十分じゃない?私も嬉しいし。むしろ、僕の知り合い全員親友ですって言うほうが気持ち悪いよ。そんな人いないだろうし。蓮くんは普通だよ」

蓮くんは誰にも興味を持てないと言っているけれど、彼は人の繊細な変化によく気づく。
おそらく、周りの人のことをしっかり、見ているし、彼が思っているほど人に興味がないなんてことはないと思う。
ただ、その興味が誰にでも平等に注がれていて、特定の人に深く興味を持てないと思っているだけではないのか。

そんな話をしているうちに、いつも、私たちが通っているスーパーに到着し、食材を籠に入れ始める。
二人で相談して、せっかくだから、肉はいつもより高い肉を買おうと決め、鍋に合いそうなお酒を蓮くんに選んでもらった。
私は、いつもアパートのみんながオススメしてくれるお酒を飲んでいるだけなので、お酒に関しては、全く詳しくない。

いつもより、少しだけ豪華な食材が沢山入ったレジ袋を見て、私は心が躍った。
それは、蓮くんも同じだったようで、料理するのが楽しみだと言った彼の声は弾んで聞こえた。

今日も私の家に食材を運び込み、私の家のキッチンで料理をする。
初めて、二人で料理をしたときは、物を取ろうとして腕がぶつかったり、ごめんという言葉が飛び交ったりしていたが、二年も経つとそんなこともなくなった。
「あれ取って」という言葉だけで、何が必要なのかなんとなくわかるし、こんなに狭いキッチンでぶつからなくなったというだけでもすごいことだと思う。

阿吽の呼吸というやつだ。

そして、料理を終えて鍋が良い感じになるまで録画してあるその日の朝ドラを見ることになっている。
お互いに今は朝ドラにハマっていて、金曜の夜は、一緒に一週間分の振り返りを見ている。
今週分の朝ドラを見終わった後、「そろそろ、いい感じじゃないかな」と言って蓮くんは立ち上がり、鍋を確認した。

「どう?」
「うん。もうみんな集めていいと思う」

いつもは遅れてくる桜さんだが今日は特別な日だからと午後休暇を取ったそうだ。
桜さんは惣菜を準備する担当になっている。鍋が完成したので、二人を招集した。

「それじゃあ、楓の就職先決定を祝しまして・・・・。乾杯!!」

桜さんの合図に合わせて私たちは乾杯をした。
テーブルの上は華やかに飾られていて、食欲がとてもそそられるが、今日は楓さんのお祝いなので私が一番にがっついてはいけない。
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