白い菫が紫色に染まる時
【2016年 冬 菫 東京】~共犯と決断~
【2016年 冬 菫 東京】

あの日から、楓さんとは気まずくなってしまうのではないかと不安だったが、楓さんが今までと全く変わらない態度で接してくれたので、普段と変わらず、ぎこちない思いをしていた私も一か月ほど経った頃にはそれまで通りに戻っていた。

しかし、その一か月間の私の態度が変だったことに蓮くんは気づいていただろう。
そして、私と楓さんの間に何かがあったことも悟ったかもしれない。
人の変化に敏感な人だから。それでも、何も触れないでいてくれた。

そして、早めに就活が終わった楓さんは半年間の海外留学に自分のお金で行った。
建築を学ぶためには、国内より海外で学んだ方が勉強になるらしい。

その間、私と蓮くんは三年になり新しくゼミに入ったりインターンに行ったりと去年の楓さんみたいに忙しくなった。
私は桜さんの影響で出版社のインターンに蓮くんは商社のインターンに行っていた。
そして、インターンに加えてバイトもあった私たちは、以前ほど会うことはなくなった。
たまに、お互いの時間が合えば一緒にご飯を食べるくらいだ。

だから、久しぶりにアパートの住民全員が揃ったのは、年明けの正月だった。
その日は、楓さんの少し早めの卒業祝いを兼ねての食事会を桜さんが予約してくれた。
落ち着いているけど敷居が高すぎないレストランだ。
話題は楓さんの留学の感想から始まり、向こうで撮った写真を色々見せてくれた。
私は国内から出たことがないので、とても新鮮なものばかりで輝いて見えた。
自分の意志で外の世界に出た楓さんが輝いて見えた。
< 76 / 108 >

この作品をシェア

pagetop