青春の坂道で
翌朝は二人とも遅くまで寝てしまって起きた時には昼だった。 「おはよう。」
「うーん、頭痛い。 飲み過ぎたかも。」 「綾子ちゃんも二次会に付き合わされたんだもんなあ。」
「それはいいんです。 一郎さんと一緒だったから。 でも頭痛い。」 「俺も今日は動けねえなあ。 休みだからいいけどさ。」
「私はどうだったかな? メモを部屋に忘れてきたから分かりません。」 「まあとにかく今日はのんびりしよう。 動くとろくなことにならないから。」
「そうですよね。」 それで俺たちはまた布団をかぶった。
あの公園ではまたまた調べが続けられている。 昨日のおっさんだけじゃなかったらしい。
ほんとにさあ、迷惑だよなあ。 やってる連中は気持ち良くてやってんだろうけど、こっちは堪ったもんじゃないぜ。
大学にもそんなのが居た。 おかげで俺たちも調べられたっけ。
あの時は下宿のおばさんも冷た過ぎる眼で見てたっけ。 嫌なもんだよ まったく。
俺なんかバイト先が居酒屋だからさあ、店の連中と蔓んでるんじゃないかって相当に疑われたよな。
もちろん先輩をはじめ、薬何てやってるやつは居やしない。 やってるって分かったらその場で警察を呼ばれてる。
「いいか。 社会に迷惑を掛けるような人間は要らない。 約束できるか?」 最初の日、先輩は口酸っぱく念を押してから仕事を教えてくれる。
だから冗談でも薬の話をすると大変なんだ。 いきなり「帰れ! そんなやつは要らねえ!」って怒り出すから。
その店で1年半近く世話になってきた。 おかげでだいぶ料理も作れるようになったよ。
魚だって捌けるようになってきた。 魚屋でもいいかって具合にね。
先輩は独学で勉強して調理師の免許を取ったんだって。 すごいよなあ。
調理師か、、、俺も狙ってみようかな。 先輩を見ているとそんな気になってくる。
「文学部じゃあ就職先はそんなに無いだろう? 手に職を付けたほうがいいんじゃないのか?」 先輩にもそう言われたっけ。
「お前さえ良ければこの店を任せてもいいんだぜ。」 「いや、それはまだまだ早いっす。」
「何を言ってんだ? 3年になれば嫌でも仕事探しに動くようになるんだ。 考えとけよ。」 先輩と飲みながらそんな話もしたんだっけなあ。
二階へ上がってくる足音が聞こえる。 おばさんでも来たのかな?
「手紙が来てるよ。」 部屋のドアを開けるとおばさんが無愛想に手紙を差し出した。
「ああ、どうも。」 真夜中の大騒ぎで寝不足らしい。
おばさんはブツブツ言いながら下りていった。 「誰からだろう?」
封を切ってみると沼田の姉さんからだった。
『この間はわざわざ葬式に来てくれてありがとう。 弟も喜んでくれてるわ きっと。
来年は一周忌。 またみんなで集まってくださいね。
皆さんの弟を思う気持ちに泣いてしまいました。
では。』
やつの死に顔を拝めなかったのは残念だけど姉さんも喜んでくれたらしい。 行って良かったな。
「お手紙ですか?」 「そう。 俺の同級生が事故で死んだから葬式に行ってきたんだ。」
「同級生?」 「そうだよ。 面白いやつだった。」
綾子はぼんやりした頭で窓の外を見た。 「パトカーが走ってる。」
「昨日の捜査の続きだろう? 迷惑な連中だぜ。」 「去年もって言ってたみたいだけど、、、。」
「ああ。 去年も同じように捕まったんだ。 飽きないやつらだぜ。 まったくよ。」 「そうなんだ。」
「さてさて昼か。 コンビニにでも行くか?」 「そうですねえ。 軽く済ませたい。」
そこで俺たちは二人で下宿を出た。 おばさんは相変わらず怪訝そうな顔をしている。
太陽さんは今日も元気良く頭の上にまで昇っている。 暑くも無く寒くも無い。
もうすぐゴールデンウィークだ。 綾子はどうするんだろう?
ブラブラと公演を回るように歩いていく。 警察官が公園内を調べて回っている。
二日酔いの日で良かったな。 普段ならどえらい迷惑だぜ。
俺は考え事をしながら歩いている。 綾子は公園を見回しながら俺に付いてきている。
グルっと公園を回ってコンビニに飛び込む。 「何がいいかな?」
「私はおにぎり。」 「じゃあ俺はサンドイッチにしようかな。」
ついでにお茶とコーヒーを買ってレジへ、、、。」 「あれあれ? 一郎君じゃないか。」
「え? なんだ、高木さんか。」 「なんだは無いよ。 去年まで一緒に飲んでたのに。」
「そうでした。 忘れてました。」 「彼女でも捕まえたのか?」
「いえいえ、まだ友達ですよ。 仲はすごくいいけど。」 「そうは見えないなあ。 彼女だろう?」
高木勝彦はこの春に卒業した文学部の先輩だ。 綾子は「彼女だろう?」と聞かれて思わず頷いた。
「大事にしろよ。 取られちまうぞ。」 「分かった。 分かったから。」
俺はサンドイッチを持つと逃げるようにコンビニを出てきた。 「先輩なんですか?」
「そうだよ。 綾子ちゃんと入れ違いだな。」 「そうなんだ。 いい先輩が居て羨ましいなあ。」
「そうかなあ?」 「居酒屋の店長さんもそうなんでしょう?」
「そうだそうだ。 あんな人はまず居ないなあ。」 「ますます羨ましいですよ。」
「綾子ちゃんだってそのうちに見付かるよ。」 「私は一郎さんだけ居れば十分ですけど。」
「おいおい、もっといいやつは他にもたくさん居るぞ。」 「いえいえ。 目移りしたくないので、、、。」
「慎重なんだなあ。」 「そうでしょうか?」
「普通なら今頃は誰や彼やって粗捜ししてるぞ。」 「そんなの嫌だなあ 私は。」
話しながら下宿の前を通り過ぎる。 この辺りは本当に静かだな。
公園の裏に回ってみる。 廃業した床屋が今も残っている。
「床屋なんてやってたんですか?」 「そうだなあ、5年前くらいまでやってたんだって。」 「へえ、それでも潰れちゃったんだ。」
「この辺は学生が多いからねえ。 ヘアトリートメントなんてまずやらないし、金にはならなかったんだろうなあ。」 「私もパーマはどうも、、、。」
「そうなの? 似合いそうだけど。」 「でもなんか嫌いなんですよ。 合わないなって思って。」
「そうか。 綾子ちゃんならロングのほうがいいんじゃないかなあ?」 「そうですか? 私はセミロングで十分かと思ってたんだけど、、、。」
床屋を通り過ぎるとバス通りへ抜ける路地が有る。 この先は国道だったはず、、、。
ブラブラと歩き回って公園の入り口までやってきた。 「もうお巡りも居ないな。 中に入ろうか。」
「いいのかなあ?」 「調べも終わってるみたいだな。 おっさんたちも居ないし入ろう。」
いつものベンチに座って俺はサンドイッチを取り出した。 綾子も隣に座っておにぎりを摘まんでいる。
「天気もいいし、本を持ってくれば良かったな。」 綾子がポツリと言う。
俺はというとそんな綾子を見詰めながらコーヒーを飲んでいる。 「一郎さん、本気で彼女にしてください。」
「おいおい、何だよ。 いきなり?」 「さっき言ってたでしょう? だから気になっちゃって。」
「そっか。 綾子ちゃんは間違いなく彼女だよ。」 「ほんとにいいんですか?」
「俺だってずっと迷ってたよ。 でもね、やっぱり好きなんだ。」 「私もです。」
ここに誰も居なかったから助かったような物。 うるさいあいつらが居たら絶対にこんなことは言えないぜ。
俺が太陽さんを仰いでいたら綾子が寄り添ってきた。 その髪を撫でてみる。
でもさあ、そこから先へは進めそうにない。 遊びじゃないんだし、、、。
「うーん、頭痛い。 飲み過ぎたかも。」 「綾子ちゃんも二次会に付き合わされたんだもんなあ。」
「それはいいんです。 一郎さんと一緒だったから。 でも頭痛い。」 「俺も今日は動けねえなあ。 休みだからいいけどさ。」
「私はどうだったかな? メモを部屋に忘れてきたから分かりません。」 「まあとにかく今日はのんびりしよう。 動くとろくなことにならないから。」
「そうですよね。」 それで俺たちはまた布団をかぶった。
あの公園ではまたまた調べが続けられている。 昨日のおっさんだけじゃなかったらしい。
ほんとにさあ、迷惑だよなあ。 やってる連中は気持ち良くてやってんだろうけど、こっちは堪ったもんじゃないぜ。
大学にもそんなのが居た。 おかげで俺たちも調べられたっけ。
あの時は下宿のおばさんも冷た過ぎる眼で見てたっけ。 嫌なもんだよ まったく。
俺なんかバイト先が居酒屋だからさあ、店の連中と蔓んでるんじゃないかって相当に疑われたよな。
もちろん先輩をはじめ、薬何てやってるやつは居やしない。 やってるって分かったらその場で警察を呼ばれてる。
「いいか。 社会に迷惑を掛けるような人間は要らない。 約束できるか?」 最初の日、先輩は口酸っぱく念を押してから仕事を教えてくれる。
だから冗談でも薬の話をすると大変なんだ。 いきなり「帰れ! そんなやつは要らねえ!」って怒り出すから。
その店で1年半近く世話になってきた。 おかげでだいぶ料理も作れるようになったよ。
魚だって捌けるようになってきた。 魚屋でもいいかって具合にね。
先輩は独学で勉強して調理師の免許を取ったんだって。 すごいよなあ。
調理師か、、、俺も狙ってみようかな。 先輩を見ているとそんな気になってくる。
「文学部じゃあ就職先はそんなに無いだろう? 手に職を付けたほうがいいんじゃないのか?」 先輩にもそう言われたっけ。
「お前さえ良ければこの店を任せてもいいんだぜ。」 「いや、それはまだまだ早いっす。」
「何を言ってんだ? 3年になれば嫌でも仕事探しに動くようになるんだ。 考えとけよ。」 先輩と飲みながらそんな話もしたんだっけなあ。
二階へ上がってくる足音が聞こえる。 おばさんでも来たのかな?
「手紙が来てるよ。」 部屋のドアを開けるとおばさんが無愛想に手紙を差し出した。
「ああ、どうも。」 真夜中の大騒ぎで寝不足らしい。
おばさんはブツブツ言いながら下りていった。 「誰からだろう?」
封を切ってみると沼田の姉さんからだった。
『この間はわざわざ葬式に来てくれてありがとう。 弟も喜んでくれてるわ きっと。
来年は一周忌。 またみんなで集まってくださいね。
皆さんの弟を思う気持ちに泣いてしまいました。
では。』
やつの死に顔を拝めなかったのは残念だけど姉さんも喜んでくれたらしい。 行って良かったな。
「お手紙ですか?」 「そう。 俺の同級生が事故で死んだから葬式に行ってきたんだ。」
「同級生?」 「そうだよ。 面白いやつだった。」
綾子はぼんやりした頭で窓の外を見た。 「パトカーが走ってる。」
「昨日の捜査の続きだろう? 迷惑な連中だぜ。」 「去年もって言ってたみたいだけど、、、。」
「ああ。 去年も同じように捕まったんだ。 飽きないやつらだぜ。 まったくよ。」 「そうなんだ。」
「さてさて昼か。 コンビニにでも行くか?」 「そうですねえ。 軽く済ませたい。」
そこで俺たちは二人で下宿を出た。 おばさんは相変わらず怪訝そうな顔をしている。
太陽さんは今日も元気良く頭の上にまで昇っている。 暑くも無く寒くも無い。
もうすぐゴールデンウィークだ。 綾子はどうするんだろう?
ブラブラと公演を回るように歩いていく。 警察官が公園内を調べて回っている。
二日酔いの日で良かったな。 普段ならどえらい迷惑だぜ。
俺は考え事をしながら歩いている。 綾子は公園を見回しながら俺に付いてきている。
グルっと公園を回ってコンビニに飛び込む。 「何がいいかな?」
「私はおにぎり。」 「じゃあ俺はサンドイッチにしようかな。」
ついでにお茶とコーヒーを買ってレジへ、、、。」 「あれあれ? 一郎君じゃないか。」
「え? なんだ、高木さんか。」 「なんだは無いよ。 去年まで一緒に飲んでたのに。」
「そうでした。 忘れてました。」 「彼女でも捕まえたのか?」
「いえいえ、まだ友達ですよ。 仲はすごくいいけど。」 「そうは見えないなあ。 彼女だろう?」
高木勝彦はこの春に卒業した文学部の先輩だ。 綾子は「彼女だろう?」と聞かれて思わず頷いた。
「大事にしろよ。 取られちまうぞ。」 「分かった。 分かったから。」
俺はサンドイッチを持つと逃げるようにコンビニを出てきた。 「先輩なんですか?」
「そうだよ。 綾子ちゃんと入れ違いだな。」 「そうなんだ。 いい先輩が居て羨ましいなあ。」
「そうかなあ?」 「居酒屋の店長さんもそうなんでしょう?」
「そうだそうだ。 あんな人はまず居ないなあ。」 「ますます羨ましいですよ。」
「綾子ちゃんだってそのうちに見付かるよ。」 「私は一郎さんだけ居れば十分ですけど。」
「おいおい、もっといいやつは他にもたくさん居るぞ。」 「いえいえ。 目移りしたくないので、、、。」
「慎重なんだなあ。」 「そうでしょうか?」
「普通なら今頃は誰や彼やって粗捜ししてるぞ。」 「そんなの嫌だなあ 私は。」
話しながら下宿の前を通り過ぎる。 この辺りは本当に静かだな。
公園の裏に回ってみる。 廃業した床屋が今も残っている。
「床屋なんてやってたんですか?」 「そうだなあ、5年前くらいまでやってたんだって。」 「へえ、それでも潰れちゃったんだ。」
「この辺は学生が多いからねえ。 ヘアトリートメントなんてまずやらないし、金にはならなかったんだろうなあ。」 「私もパーマはどうも、、、。」
「そうなの? 似合いそうだけど。」 「でもなんか嫌いなんですよ。 合わないなって思って。」
「そうか。 綾子ちゃんならロングのほうがいいんじゃないかなあ?」 「そうですか? 私はセミロングで十分かと思ってたんだけど、、、。」
床屋を通り過ぎるとバス通りへ抜ける路地が有る。 この先は国道だったはず、、、。
ブラブラと歩き回って公園の入り口までやってきた。 「もうお巡りも居ないな。 中に入ろうか。」
「いいのかなあ?」 「調べも終わってるみたいだな。 おっさんたちも居ないし入ろう。」
いつものベンチに座って俺はサンドイッチを取り出した。 綾子も隣に座っておにぎりを摘まんでいる。
「天気もいいし、本を持ってくれば良かったな。」 綾子がポツリと言う。
俺はというとそんな綾子を見詰めながらコーヒーを飲んでいる。 「一郎さん、本気で彼女にしてください。」
「おいおい、何だよ。 いきなり?」 「さっき言ってたでしょう? だから気になっちゃって。」
「そっか。 綾子ちゃんは間違いなく彼女だよ。」 「ほんとにいいんですか?」
「俺だってずっと迷ってたよ。 でもね、やっぱり好きなんだ。」 「私もです。」
ここに誰も居なかったから助かったような物。 うるさいあいつらが居たら絶対にこんなことは言えないぜ。
俺が太陽さんを仰いでいたら綾子が寄り添ってきた。 その髪を撫でてみる。
でもさあ、そこから先へは進めそうにない。 遊びじゃないんだし、、、。