【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜
「リヒャルド王子も……素敵だと思いますよ」
「俺が?」
「はい。感受性豊かで、いい意味で子どものままというか……。どろどろした世界に染まらない無垢さは、大勢の人たちに愛されるものです」
「……はは、どうも」
彼は大人びた表情のまま、ふっと目を細めた。
「もう来週か。施術の日は」
「はい」
魔力核の移植の当日は、レイモンドを神殿に連れて来て、神気が充ちたこの木の下で行う。
「上手く……いくかな」
「大丈夫さ。あんなに生き生きした精霊が力を貸してくれるんだから。不安に思うことなんて一つもない。信頼しろ」
「そうですね。信じます」
「さ。今日の課題やっちまおーぜ」
オリアーナは立ち上がり、神木を見上げて言った。
《――光よ》
黄色の淡い光が、かざした手の上に現れる。頭の中のイメージを精霊たちに伝えると、精霊たちが光の元に集まって来て光の粒を受け取った。彼らは四散して、木のあちこちを光で彩った。繊細な輝きを放つ神木は幻想的で、オリアーナとリヒャルドは息を飲んだ。
「リヒャルド王子」
「なんだ?」
「長々付き合っていただいて、ありがとうございました」
「水臭いこと言うなよ。友達なんだ、当たり前だろ?」
「そのお言葉、ありがたく頂戴させてもらいます。このご恩はどこかで必ず」
にっこりと微笑みかければ、リヒャルドは僅かに目を泳がせて赤面するのだった。
遂にオリアーナは、精霊の力で目には見えない光の粒子を移動させることに成功した。魔力も光も、同じエネルギーの塊だ。つまり、魔力核の移動も可能だということ。
――あとは、本番を迎えるのみだ。