【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜


 ◇◇◇



 そして、魔力核移植の当日を迎えた。
 空は雲ひとつなく澄み渡っている。

 施術に立ち会うのは、エトヴィンにセナ、それから聖女ユフィーリアだ。両親には何も伝えていない。レイモンドはかなり憔悴していて、神殿まで来るのも一苦労だった。馬車の揺れで辛そうにするので、何度も休みを挟んでやっとだった。

「すみません、セナ。運ばせてしまって……。重くはありませんか?」
「いいや。お前はもっと食べた方がいいくらいだ」

 痩せ衰えたレイモンドを背負いながら、セナは眉を寄せた。神木の根元にレイモンドを座らせる。彼はゆっくりと深呼吸した。

「ここは磁場がいいですね。心が落ち着きます」
「レイモンドはそのまま楽にしていて。施術を始める準備をするから」
「あまり気負いすぎず。姉さん」
「うん」

 オリアーナは目を閉じて瞑想を始めた。まずは体の中の気を整えることが大事だ。三十分瞑想をすると、精霊たちの存在をより濃く感じた。オリアーナはレイモンドを見下ろしながら言う。

「――始めるよ」
「……はい。お願いします」
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