【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜


『もう大丈夫よ。主様。泣くのはお辞めなさい』
「……!」

 オリアーナの視線の先で、羽の生えた小さな妖精が浮遊していた。愛らしい妖精は、汗ばんだレイモンドの額にそっと口付けした。

『――お眠り』

 妖精がそう告げると、レイモンドの体から力が抜けてよろめく。オリアーナがその体を支えれば、耳元で寝息が聞こえ始めた。そっとレイモンドを寝台に横にして、妖精の方に視線を戻す。

「……あなたは? 妖精……?」
『いいえ。わたくしは主様の願いそのものよ。――誰の心にも宿っている願い。あなたはそれを具現化する聖女の力があるの。……その美しい青年は大丈夫。恐れないで信じ続けなさい。そうすれば、どんな願いだって叶うから』

 彼女は諭すようにそう言い残して、光の粒になって消失した。その光の残滓を眺めていたら、自然と涙が流れていた。

(誰でもいい……。どうか、弟のことをお救いください。この国を建国した偉大な始祖五家の先祖様、神々の皆様……。どうか、弟のことを助けてください……。他には何も……望まないから)

 寝台の上で眠るレイモンド。タオルで額の汗を拭ってやるが、オリアーナの瞳から落ちる雫で濡らしてしまった。
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