【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜


 ◇◇◇



 修行から一週間。今日の保護役は、ジュリエットだ。

「まぁまぁまぁ……なんと素敵なのでしょう……! シミひとつないお肌も、長いまつ毛も、形の良い唇も、風になびく御髪も。この世の美を凝縮したかのような婉麗さですわ。ああ……この一分一秒をこの目に焼き付けておかなくては……」

 神木の根元で瞑想していたオリアーナは目を開ける。もう少しで顔のどこかが触れてしまいそうな距離にジュリエットの顔があり、視線がかち合う。彼女はうっとりと目を細めた。

「わたくし、オリアーナ様の二重幅に埋まりた……ンンっ」

 人差し指で彼女の唇をつんと押す。

「もう少し静かにしてくれるとありがたいな」
「あらまぁ! わたくしったらなんて愚かなのでしょう……っ。オリアーナ様の大切な訓練をお邪魔してしまうなんて。どうぞ、静かにしておりますのでそのまま続けてくださいまし! わたくしは静かに! ここで見ておりますわ」
「…………」

 ジュリエットは任せてくれと言わんばかりに、ふんと鼻を鳴らした。荒々しい鼻息が顔にかかり、前髪が揺れる。オリアーナは訝しげに眉を寄せた。

「近いかな、顔が……」
「そんな……っ。これ以上離れては、寂しくて死んでしまいますぅ……」
「君は飼い主が恋しい犬か」

 人に飼われた犬は、飼い主とちょっと離れると寂しさから食欲がなくなったり、病気になったりするというが。

「わたくしが犬になったら、飼ってくださる?」
「ふふ、相当手を焼きそうだな」

 手で犬の真似をして、小首を傾げるジュリエット。あざとくて可愛いからずるい。すぐに抱きついて来ようとする彼女に、犬を躾けるように「ステイ」と言って制止した。頭を撫でてやれば、嬉しそうに顔を擦り付けてくる。本当に犬みたいだ。
 結局、ろくに集中できないまま今日の瞑想を終えた。

「今日のミッションは、『枯れた花を復活させる』ですわよね。かなり難易度が上がりましたね」
「うん。実は一昨日からやっているんだけど、どうにも上手くいかないんだ」
「そうでしたの……。お花さんも、オリアーナ様の麗しいお姿に恥じらっておられるのかもしれませんね」
「はは、何だそれ」

 オリアーナの手元には植木鉢が。植られた花はすっかり枯れている。
 とりあえず、花が蘇り、生き生きと咲く様子をイメージして精霊たちに依頼してみる。しかし、なかなか思うようにいかない。

(精霊さんたち。どうかこの枯れた花を、もう一度咲かせてください)

『やってみるよ!』
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