【完結】魔法学院の華麗なるミスプリンス 〜婚約解消された次は、身代わりですか? はい、謹んでお受けいたします〜

「たとえ片想いであっても、叶わぬ恋であっても、誰かを好きになれたことは、それだけで尊くて価値があることだと思うのです」

 彼女は自分の胸に両手を当てて、口元を弛めた。

「わたくしは、オリアーナ様に出会えて幸運でございました。あなたを好きになれて幸せ。毎日がキラキラしています。ただオリアーナ様が生きていらっしゃって、笑っていてくださること以上にわたくしは何も望みませんの。あなたは違いますか?」

 ふと、セナのことを思い浮かべた。小さいころからいつも傍にいて、いつも味方でいてくれた。レイモンドとセナとオリアーナの三人で沢山遊び、悪戯もしてきた。その思い出はどんな宝よりかけがえのないもので。

 オリアーナもそっと胸に手を当てた。暖かな感覚がじんわりと広がっていく。セナが与えてくれた優しい気持ちだ。

「私も……セナを好きになれてよかったと思ってる。あんな素敵な人を好きになれるなんて幸せだ」
「そうですわね」
「ありがとうジュリエット。おかげで元気が出たよ。さ、もう帰ろうか。日が暮れる」

 オリアーナは清々しい気分で立ち上がり、歩き出した。
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