聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 まずいもの見たな、とは思うのだが、それを面と向かって言う不躾さは持ち合わせていない。

「えっと……こっちに来て、いろいろ不便ですよね。あちらに帰りたいですよね」
 三千花がなんとかそう言うと、晴湖とシェリナから嫌悪の目を向けられた。

「私は帰りたいだなんて思わないわ。ここで使命があるのよ。やりとげるわ」
 シェリナの言葉は思いがけないものだった。使命を果たすということは聖母をやりとげる、ということなのだろうか。

「あなた、幸せに育ったのね」
 晴湖が言う。

「え、あの……」
「なんで帰りたいと思ってると思うの?」
「むこうに親とか友達とか……」

「親だからっていい人とは限らないのよ」
 晴湖に言われて三千花は失言を悟る。

「見たでしょ、私の元の顔。周りからさんざんブスって言われたわ。実の親にもブスだの化け物だのって死ぬほど言われて育ったの。当然いじめも受けたわ。親に言ったらブスはいじめられて当然だって笑われて、二度と親には言わなかった。一時は死ぬことも考えたわ。でも死ぬくらいならって整形したの」
「そうだったんですか」
 三千花にはそれしか言えなかった。

「整形をバカにする人もいるけど、私は間違ったことはしてないわ」
 晴湖は固い表情のまま、胸を張って言った。

「私は、整形で人生を明るく変えられるならいいと思います」
 三千花はそう答えた。本心だった。

 晴湖は険しい顔をして彼女を見つめる。
 また失言してしまったのか、と三千花は青ざめる。

「あなた……」
 耐えきれなくて目をそらした。

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