聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「この人がいつバカにしたのよ、被害妄想じゃない。そうやってひがんでばっかりいるから表情がブスになるのよ」

「私のことブスって言った!」
「表情が、よ!」

「整形するお金がある人に言われたくない!」
「頑張って稼いだのよ! 努力の結果よ!」
「どうせあんまりブスじゃなかったんでしょ!」

「見なさいよ、これ!」
 と晴湖は免許証を見せた。まじまじと見て、シェリナは言葉に詰まった。

「私は努力で美人になったの。誇っていいと思ってるわ! あなたも今の自分の外見が嫌なら努力するべきよ。まずはお化粧ね、髪も切って……」
「放っておいて!」

 シェリナは席を立って部屋から走り出た。
 思わず追いかけようとする三千花を、リグロットが止めた。
「外には彼女の護衛と侍女がいますから大丈夫です」
「本当に大丈夫かなあ」

「ごめんなさいね、三千花さん。お茶会を台無しにしてしまったわ」
 晴湖が謝罪した。
「こちらこそ、申し訳ありません」
 知らずとは言え、気分を害することをしてしまった。免許証も学生証もあとでこっそり渡せばよかったのに。

「あなたとはもっとお話してみたいわ。またお茶に誘ってくださいね。私の方は状況がいつ変わるかわからないんだけど」
 曖昧(あいまい)な言い方をしているが、聖母としての可能性が薄く、日本に帰されるかもしれない、ということだろうか。

「近いうちにお会いできたら、と思います」
 三千花が答えると、晴湖はにっこりと笑った。魅力的な笑顔だった。
 その様子を、窓の外から黒猫が見ていた。


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