聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 神殿からの帰路はリグロットに連れられ、部屋への道を歩く。

「私は縛らないの?」
「その必要を感じません」

「逃げるかもしれないのに? あの刑事は何もしてないのに縛ったのに」
「あなたはおわかりでない」
 リグロットは厳しい顔をしていた。いつもの柔和な笑顔の片鱗はない。

「アルウィード様は置き手紙を見てすぐ、お止めするのも聞かずに転移されました。指輪の気配がしない、と焦っておられて。つまり、あなたが落命されたのでは、と心配しておられたのです」
 静かな声に怒りがこもっていて、三千花は口をキュッと引き締める。

「転移先で何度も探索魔法を使われたのでしょう。指輪があれば居場所がわかるとは言っても、魔法での捜索をしなければわかりません。そして、探索魔法は転移魔法同様にかなりの魔力を消費します」
 リグロットは冷たく三千花を見据える。

「さらに再度の転移魔法でこちらに帰ってこられた。どれだけの魔力を消費なさったことか。それほど大切に思われているのに」
 彼の目は怒気をはらんでいた。

「あなたはまったくおわかりでない」
 三千花はぐっと拳を握る。

「勝手に連れてこられた私のことも考えて」
「私はアルウィード様の方が大切です」
 リグロットははっきりと言い切った。

「アルウィード様があなたを大切に思われていらっしゃるから、私もそのようにしているに過ぎません。あまり調子に乗られませんよう」
 彼の濃緑の目が鋭く光る。

 調子に乗ってるわけじゃない。が、リグロットの目を見たら(ひる)んでしまい、言えなかった。

 どうしても三千花には疑問が残る。


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