聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜





 どれくらい時間がたっただろうか。
 シェリナに蹴られた部位が痛い。頬も痛いが、足ほどではない。

 疲れたらしいシェリナは壁にもたれかかり、うとうととしている。
 三千花は魔法を使おうと試みたが、まったく何も発動しなかった。

 よくある物語ではピンチの際に何かの隠された力が目覚めるのに。
 自分にはその気配がない。魔法の才能がないとアルウィードに断言されてもいた。

 当然だ、と歯噛みする。
 三千花はただの一般人で、聖母などではないのだから。何もできない。

 ふと窓を見ると、もう日が暮れかけていた。
 そこをよぎる黒い影。

 猫!?

 三千花は目を見張った。
 黒猫がこちらを(のぞ)いているように見えた。

「リーンウィックさん! 助けて!」
 叫ぶ。
 黒猫は身を(ひるがえ)し、消えた。

 そんな都合よくいるわけないか。もし本当に彼だったとして、傷つけることを言った自分を助けてくれるかどうか。

 三千花はため息をついた。
 そのとき、扉が開いた。

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