聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「聞いてるの!」
 叫びとともに、シェリナが三千花の頬をひっぱたいた。

「今回の誘拐はあんたを殺すためのものなんだから! 私がこれで聖母に認められるんだから!」
 まるで自白だ、と三千花は思う。

「ユレンディール様が私を助けてくれて、私と結婚するの!」
「そうなの」
 三千花はかろうじてそれだけを答えた。

「そうなの! 助けにきてくれたらきっとすぐに抱きしめられるんだわ。愛しいシェリナ、無事でよかったって。それから――」
 うっとりとシェリナは語る。明るい未来絵図を。

 三千花は疑問に思う。
 ユレンディールは果たして助けに来るのだろうか。
 大神官長が、と彼らは言っていた。その人物はユレンディールの父だ。やはり彼に関わりが?

 だが、大神官長が三千花を殺すメリットは?
 外から来た聖母が気に入らないなら全員を殺すはず。いや、そんなことをしなくてもあちらへ送り返せばいいだけだ。

 シェリナを聖母に確定させる出来レースを作るため? そんな手間をかける必要がどこに? 三千花がユレンディールを拒否したからこうなったのか? 
 もっと思い出せ、と三千花は自分に命じる。

 この外出はお忍びだとリグロットは言っていた。だが、派手な馬車での外出になった。前回より控えめだったからそれしかなかったのか。それとも三千花を排除するために、すぐにバレるように彼が手引をした? だが、それならばあのように命がけで守ってくれるだろうか。

 そもそも博物館に誘ったのはシェリナだ。
 彼女が単独で思いついて実行できるはずはない。
 いったい誰がシェリナに……。

「私の話を聞けったら!」
 シェリナはまた三千花の頬を叩いた。憤激(ふんげき)で息が荒くなっていた。
 悔しそうに、三千花の足を蹴飛ばす。

「私が! 私が!」
 何度も蹴飛ばす。狙いは適当で、足も腰も蹴られてしまう。
 シェリナが疲れるまで、彼女は蹴られ続けた。


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