聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「おとぼけにならないで。おわかりでしょう?」
 彼の反応を見ながら舌で傷をなぞり上げる。彼は嫌悪で顔を歪ませていた。

 ロレッティアは愛おしそうに目を細める。
「わたくしは貴方をお慕いしております」
 言いながら、首筋を舐める。

「あなたは兄の婚約者だ」
「ええ、そうです。勝手に決められました。国力を高めるという名目で」
 彼女の父が将軍であるために決定した結婚だった。

 ロレッティアはアルウィードの頬に口づける。
「貴方は私の心に炎を与えた。恋の炎を」
 彼の唇に自らの唇を重ねた。

 そのまま彼の中に入ろうとするが、彼は口を引き結び、侵入を拒否する。

 ロレッティアはカッとしてまたムチを振るった。
「貴方はもはやわたくしのもの。逆らっても無駄ですわ」

 まだ幼かったロレッティアが意に沿わぬ縁談に心を痛め、連れて行かれた王城の片隅で泣いていたとき。

 アルウィードが現れて、彼女を慰めてくれた。
 魔法で水を放射して虹をつくったり、風を刃にして木の花を取ってくれたり、花吹雪で包んでくれたりした。

 彼の優しい笑顔に、ロレッティアはすぐに恋に落ちた。
 王族との婚姻が必須であるならば彼がいい、と彼女は願った。
 だが、幼いアルウィードは遠い異国に婚約者がいると語った。

「レオルーク様との婚約が正式に決まり、貴方との結婚は望めなくなりました。最初はわたくしもあきらめようとしました。レオルーク様に誠心誠意お仕えしようと思いました」

 良き妻であれば、アルウィードは良き義姉として親しくしてくれるに違いないと思った。
 思惑とは裏腹に、変わり者と噂の第一王子は彼女をまったく見なかった。彼女とのお茶会をすっぽかし、おでかけの誘いはすべて無視。兄弟仲は悪く、アルウィードとの交流もなかった。

 そんなレオルークに初めてを求められたとき、彼女はまだ少女だった。迷い、悩んだあげく、彼女は初めてを捧げた。

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