聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜





 どれほどの時間が過ぎたころだろうか。
 扉が開かれ、一人の女が入ってきた。

「ご機嫌いかが?」
 女は二名の私兵を従えていた。
 アルウィードは答えない。油断なく女を見ている。

「わたくしはとても機嫌がいいですわ。貴方がここにいてくださるんですもの」
 彼女はうるんだ瞳を彼にむけた。透明感のある肌に上気した頬、濃い茶金の華やかな髪、上品な真紅のドレスに身を包んだ彼女は淑女として知られていた。

「婚約者殿、どうしてこんなことを」
 アルウィードが言うと、女は首を振った。

「どうぞロレッティアとお呼びになって」
 彼女はうっとりと彼の頬に手を添える。

「ああ、こうしておそばにいられるだけでどれだけの幸せを感じておりますことか。おわかりになりまして?」
 アルウィードはその手から逃れようと顔をそむける。

「おわかりいただけないのね」
 ロレッティアは兵士から短いムチを受け取り、ふるった。

「わたくしはずっと我慢して参りましたの!」
 ムチは彼に衝撃と痛みを与える。

「なのに、あんな女と!」
 二度目のムチ。

「私の気持ちを知りもせず!」
 三度目のムチ。
 アルウィードは声も出さずに耐えた。

「ああ、痛くてらっしゃるわよね。その痛みの分だけ、わたくしを思ってくださいませ」
 喜悦にあふれ、ロレッティアは彼の胸に負わせた傷に唇を()わせる。

「何が目的だ」
「目的?」
 クスクスと笑う。

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