聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「君の力だ」
 アルウィードは彼女の手をぎゅっと握ったまま微笑んだ。

「私の?」
「俺は今、君の魔力を借りて魔法を使っている。君自身は魔法を使えないようだが、魔力を人に与えることができる。しかも大量に。普通はできないことだ」
 そう説明されても、三千花にはよくわからない。

「私が魔法を使う時はあなたの魔力を使うのに? 普通じゃないの?」
「君が俺の魔力を使えるのはこの指輪があるからだ。だが、君が俺に魔力を供給するのは、おそらく指輪は関係ない」

 他人の魔力を利用して魔法を使うことは、本来は違法だ。しかし以前、三千花に魔法を教えたときはアルウィードはそれを言わなかったし、リグロットにも口止めした。

「あ、でも、第一王子が……」
「あいつが何?」
 三千花はアルウィードの場所を探したときの話をした。

 アルウィードは顔に怒りを満たして三千花の話を聞いた。
「そんな密着しなくても探索魔法は使えたはずだ。そもそも魔力は探索に使っていて三千花に注いでいるわけじゃない。せいぜい手を重ねる程度で場所を探せたはずだ。あいつ、そんなことを」

 本人が目の前にいたら殺しそうな勢いでアルウィードは言った。魔力を他人に与えるうんぬんの話をしていたはずなのに、と三千花は戸惑う。

「あ、刑事さんは」
「防御した。無事だ」

「じゃあ、あの人たちは……」
 レオルークとロレッティアを指して言った。怖くて名を呼びたくなかった。

「わからない。が、あの傷ではもう無理だろう」
 では、もう襲われることはないのだ。

 三千花は複雑な気持ちで息をついた。自分たちを襲った人間とはいえ、死んだと思うと良い気持ちはしなかった。

「君の優しさは美点だ。だが、背負うな。俺のせいにしろ」
 アルウィードの言葉に、彼女は静かに首をふる。何も考えずに人のせいにすることなんてできない。

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