聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「じゃあ、手を離すなよ」
 彼の手に力がこもった。決して彼女を独りにしないと伝えるかのように。

「うん」
 うなずく三千花に彼は軽く口づけた。
 赤くなって彼女はうつむく。それを見てアルウィードは微笑した。

「また魔力を借りるぞ。体調が悪くなったらすぐに教えてくれ」
「わかった」
 アルウィードが右手を上げると、瓦礫が垂直に吹き飛んだ。

 そのまま、三千花を抱えて飛び上がる。
 魔法によって、二人はふわりと瓦礫の上に舞い降りた。

 空には満天の星があった。
「すごい星」
 三千花は感激して見上げた。

 流星群が空に(きら)めく。
 暗い空から星雨(せいう)が降りそそぐ様は、三千花が初めて見るものだった。

 アルウィードは彼女を改めて抱きしめた。
「三千花、すまなかった。意に沿わない相手とのキスの不愉快さ、身をもって知った。申し訳ない」

 真摯(しんし)な声だった。連れて来られた当初に無理矢理キスをしてきたときのことを謝っているのだとわかった。

「ああ、そうなんだ。わかってくれ――」
 たのね、と言おうとして、三千花は止まる。

「それってつまり、誰かとキスしたってことよね?」
「あ、それはだな」
 アルウィードがうろたえる。

「人が心配してあちこち走り回ってるときに、ほかの女とキス!?」
「だから、それは――」

「信じられない、何して」
 るの、という言葉はアルウィードに塞がれた。その唇で。

 こんなことでごまかそうとして、と思いながら、三千花は目を閉じてアルウィードのされるがままに唇を奪われた。

 流星の空の下、兵士たちの歓声が二人を包んでいた。

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