聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「リーンウィックとエルンレッドはもう会ってるな」
 機嫌の悪さを隠そうともせず、アルウィードが言う。

「え、省略とか酷くない?」
 抗議するリーンウィックを、アルウィードはジロリと睨んだ。

「怖いな、アル兄さんは」
「お前が余計なことをするからだ」
「ちょっと会いに行っただけじゃん」
「リーン、やめなよ」
 エルンレッドはうろたえている。

「はい、そこまで」
 口げんかを始めた二人を、王妃が止める。

「アル、まだ一人紹介してないわよ」
「失礼しました。――こちらはロレッティア・ディアン・リンシュター嬢。一級貴族で、第一王子レオルークのご婚約者でいらっしゃる」

 ロレッティアは見事なカーテシーで三千花に挨拶した。茶金の豊かな髪が揺れた。美しい(くれない)の瞳だった。

 三千花は慌ててカーテシーを返そうとして、バランスを崩す。
「危ない」
 すかさずアルウィードが三千花を支えた。

「あ……ありがとう」
 アルウィードはニコッと三千花に微笑を返す。

「まあ、見ました? あのアルウィードがあんなふうに笑って」
 微笑ましい、とばかりに王妃は国王に話しかける。

「いつもムッツリ黙り込んでるアルウィードがなあ」
 とジャンレットが顎を撫でる。

 ほのぼのしてる場合じゃないって!
 オロオロする三千花は、突き刺さるような視線を感じ、振り向く。

 ロレッティアが三千花を睨んでいた。目が合うとプイと横を向く。
 何もしてないのに。っていうか、異世界人差別なのか。
 三千花はますます家に帰りたくなった。

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