聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「あの……」
 今しかない、と三千花は勇気を出す。

「聖母とかいうお話なんですけど、何かの間違いだと思います」
「まあ!」
 王妃は驚いて隣の夫である国王を見る。

「私はただの一般人ですから、元の世界に戻してください」
 空気が止まった。
 シーン、として注目が三千花に集まる。
 え、何この空気。

「君は聖母だ」
 アルウィードが三千花を抱き寄せる。
「間違いない」
「いや、ちょっと離れて」

「恐れながら、陛下に申し上げます」
 ロレッティアが言う。

「申してみよ」
「やはり、神官様方の裁定をもう一度執り行っていただく必要があるかと存じます。当のご聖母様がこのご様子では、納得しない者も現れましょう」
 三千花は激しくうなずいた。

「彼女は聖母だ」
「本人が認めていないのに?」
 アルウィードの言葉にジャンレットが片眉を上げる。

「彼女はもう聖母として知れ渡ってしまった。襲撃者から守らなければならない」
 断固としてアルウィードは言い張る。

「大神官長から見てどうだ」
「この場で見る限りではなんとも」
 ライアルードが冷静に答えた。

「ユレンディールはどう思う?」
「お会いしたばかりですので、どちらとも判断いたしかねます」
 ふむ、と国王はしばらく考えるそぶりを見せた。

 そこは! 違うってことでいいんじゃないかな!
「確証がないってことは違うってことで……」
 小声で言ってみる。が、誰からの反応もなく、国王に聞こえたかどうかはわからない。

「聖母にはしばらく滞在していただこう」
 国王が言い、三千花はがっかりした。

「お気に召さないようだが、こちらも国の命運がかかっておる。聖母であるなら他国に渡すわけにも行かない。ご容赦いただきたい」

 実質は命令じゃん。
 三千花はうなだれた。

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