聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 権力争いのたわいもないゴシップは日々現れては消えていくのだが。

 会議前、エルンレッドからユレンディールが三千花を口説いていたとの話を聞いて、アルウィードはむかっ(ぱら)を立てていた。

 お前がどうして三千花を手に入れようとするのか。権勢を強めようとしているのはお前ではないのか。

 神殿内部への働きかけも、ユレンディールや元・大神官長である祖父のギリウムなら容易いに違いない。しかつめらしい顔をして語るライアルードが何かを企んでいる可能性とてあるかもしれない。

 視線に気づいたユレンディールがにこっとアルウィードに微笑(ほほえ)みかける。
 いけすかない。
 アルウィードは口の端を(ゆが)めて笑顔を返した。

「しかし、アルウィード殿下が第一聖母候補にばかり肩入れしているのはいかがなものでしょう。婚約を内々定したとご勝手に発言されるのも問題です」
 ライアルードが言う。その通りなのだが、アルウィードは反論する。

「聖母を確保するためだ。それに彼女は俺が連れてきた。責任を取らなくては」
「まだ正式に認められておりませんのに」

「王族の誰かと結婚でいいなら、僕だっていいよね」
 リーンウィックが言う。鋭い視線を向けるアルウィードと目が合うと、ニヤリと笑った。

「嫌がらせで名乗りを上げるのはやめろ」
「二人がケンカしないよう、私の妻にしても良いのですよ」
 ユレンディールが言う。
 エルンレッドは困ったように三人を見る。
 ライアルードは表情を変えずに彼らを眺める。

 ジャンレットは息子たちの意外な様子に眉を寄せた。聖母に女性としての魅力があるとも思えないが、なぜ彼らは彼女を求めるのか。それこそが聖母の力なのか。

 面倒なことにならなければ良いが。
 ジャンレットは内心でつぶやいた。

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