龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
「飛竜でスピードがかかる場合は身体をなるべく前に倒す。できたら伏せるような形で。これで空気抵抗が少なくなるし、呼吸も楽になるよ」
いつもどおりの居残り練習。
いつもなら半分くらいしか残らないけど、今日はほとんどの候補生が残った。臥龍の儀まで2か月…やっぱり危機感があるからだろう。
あたしはバーミリオンに騎乗して例を示す。彼の身体が大きくなったから、みんながイメージしやすいかな。
「うーん…聴くと簡単に思えるんだけど、実際やると難しいよね」
ザラードがため息混じりにそう言う。周りのみんなもうんうん、と頷いて賛同してるけれども。
「ですが、難しくともやり遂げねば。とても竜騎士にはなれませんわよ?」
リリアナさんが真面目な顔で皆を見渡しながら話した。
「お父様は決して無茶なことはおっしゃる方ではありませんの。一見無謀と思えることも、適切な努力をすれば達することができる。ですから、今は泣き言をいうより努力をすべきではございません?」
そして、彼女は自らワイバーンに騎乗する。
「皆さんが臆してる間に、わたくしは努力して先にまいりますわ、はっ!」
リリアナさんは乗ったワイバーンの横腹を蹴り、飛翔を開始した。
さすが乗馬歴が長く、ヤークを乗りこなすのも時間がかからなかっただけあり、ワイバーンの騎乗も堂に入ったものだった。