龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
(あ、そうか。リリアナさんはクロップス侯爵のひとり娘だったっけ。跡を継ぐために竜騎士を目指してたんだ)
貴族の娘なら普通は婿をとってともに家を継ぐのが一般的らしいけど、竜騎士の家系の場合は話が別。
親の騎竜を子どもが受け継ぐケースがあるから、男女関係なく竜騎士になりそのまま跡を継ぐ例も珍しくないとか。
そのため、貴族の家の継承等について書かれた特許状(レターズパテント)の特許事項には、竜騎士の家系のみ女子も継承できる点が付記されている。
つまり、リリアナさんは将来女侯爵となるんだ。
(これがリリアナさんには重圧になっているんだな、きっと)
さらに、彼女の父親は竜騎士団団長だ。こうなれば、跡を継ぐだけじゃ済まないと考えるのも無理はない。
でも…。さすがに気負い過ぎだ。このままでは自分を追い込み過ぎて自滅してしまう。
あたしはまた身体を起こしワイバーンに乗ろうとするリリアナさんに声をかけた。
「リリアナさん」
「なんですの?お喋りしている時間が惜しいのですけど」
やっぱり思い詰めたような、余裕の無い表情。
これは良くないな、と彼女にこう言った。
「少しだけ口をあけて」
「なんでしょう…!」
ポイッと彼女の口にあるものを放り込む。
「なにを…!」とリリアナさんは怒りかけたけど、すぐに目を見開いた。