龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
「アリシアさん、わたくしは侯爵令嬢として生まれて育ちました。竜騎士の娘として、恥ずかしくない道を歩んできたつもりですの」
そこで一度言葉を切ったリリアナさんは、胸に手を当ててふう…と息を吐く。一度うつむかせた顔を上げ、きっぱりと言い切った。
「そう…わたくしは未来のクロップス女侯爵であり、竜騎士となる者。お父様の意思を継ぐ娘です。であれば、どんな事態が起ころうとも…無事にデビューという責務を果たす。それが、未来のクロップス家を継ぐ者の覚悟ですわ…でなければ、お父様に顔向けができません!」
キッ、と前を向いたリリアナさんの瞳には、強い意思と確固たる信念を感じる。わずか16歳にして、すでに次期当主の自覚と責任感があるなんて…!
(なんて…強いひとなんだろう)
まだ、手が微かに震えているのに。本当は、お父様のもとにまっすぐ駆けつけたいだろうに。
同い年でも、これだけの格の違いがある。身分じゃない。これが、彼女の生き方なんだ。
「そうだね。なら、絶対デビューを成功させよう!あたしが出来ることがあれば協力するよ」
「素晴らしいお覚悟……わたくしもぜひなにかさせてくださいませ」
「あたくしもですわ、リリアナ様」
リリアナさんの覚悟に感動したあたしたちは、彼女に協力を申し出た。それくらいしか、今はできないから。