龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
リリアナさんはそっと目頭を押さえ、しばらく声なくまぶたを閉じる。そして、グローブを脱いで素手を晒した。
「ありがとう……皆さん。なら、お願いがあるのですが」
「はい!なんなりと」
リリアナさんからのお願いはめったにないから、つい張り切ってしまう。あたしがやれる事ならなんでもするつもりだったけれども、彼女の“お願い”は意外なものだった。
「……手を、握ってほしいのです」
「手を……」
その願いを叶えるため、差し出されたリリアナさんの手に指で触れてみた。
(……指が、冷たい)
不自然なほどにひんやりしたリリアナさんの指先。きっと緊張やストレスで血行が悪くなっているんだろう。それに…彼女の手は微かに震えてる。
あたしは彼女の手のひらをそっと両手で包み込んで、自分なりの励ましの言葉をかけた。
「リリアナさんはずっと頑張ってきた。あたしはそれを知ってる。だから、いつもどおりにやれば大丈夫だよ」
マリナさんとカリンさんも2人でリリアナさんの片手を握りしめて、口々に励ます。
「そうですわ……リリアナ様はいつもいつも、ひとの倍以上努力されてきたではありませんか」
「リリアナ様ほど立派な淑女をあたくしは知りませんわ。御自分をお信じになってくださいませ」
あたしたち3人のぬくもりと想いが、どうかリリアナさんに届きますように。そう願っていると、やがてリリアナさんがゆっくりと頭を上げた。