龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?

リリアナさんはそっと目頭を押さえ、しばらく声なくまぶたを閉じる。そして、グローブを脱いで素手を晒した。

「ありがとう……皆さん。なら、お願いがあるのですが」
「はい!なんなりと」

リリアナさんからのお願いはめったにないから、つい張り切ってしまう。あたしがやれる事ならなんでもするつもりだったけれども、彼女の“お願い”は意外なものだった。

「……手を、握ってほしいのです」
「手を……」

その願いを叶えるため、差し出されたリリアナさんの手に指で触れてみた。 

(……指が、冷たい)

不自然なほどにひんやりしたリリアナさんの指先。きっと緊張やストレスで血行が悪くなっているんだろう。それに…彼女の手は微かに震えてる。

あたしは彼女の手のひらをそっと両手で包み込んで、自分なりの励ましの言葉をかけた。

「リリアナさんはずっと頑張ってきた。あたしはそれを知ってる。だから、いつもどおりにやれば大丈夫だよ」

マリナさんとカリンさんも2人でリリアナさんの片手を握りしめて、口々に励ます。

「そうですわ……リリアナ様はいつもいつも、ひとの倍以上努力されてきたではありませんか」
「リリアナ様ほど立派な淑女をあたくしは知りませんわ。御自分をお信じになってくださいませ」

あたしたち3人のぬくもりと想いが、どうかリリアナさんに届きますように。そう願っていると、やがてリリアナさんがゆっくりと頭を上げた。

< 205 / 267 >

この作品をシェア

pagetop