龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?

「そうでしょうね…クロップス卿がああなられた以上、ヴァイス殿下が代わりの責任者でしょうし…ですが、それではアリシアさんが…」

カリンさんがその先を言いよどむのも、無理はない。
デビュタントダンス開始は3時間後。
とてもこのままではヴァイスさんは間に合わないだろう。

でも…。

「……いいの。ヴァイスさんが無事なら……あたしは、一人でもデビュタントダンスを踊ってみせるから…それに」

あたしは、それを信じてこの場に来た。

「ヴァイスさんは、約束してくれたから。必ず一緒にデビュタントダンスを踊ってくれる…って。だから、あたしは信じてる」

あたしがそう告げると、次に呼ばれたのが意外な名前だった。

「アリスティア王女殿下が養女、アリシア・ブルーム様。どうぞお越しくださいませ」
「え、あたし!?」

まさか、と思ったけれども。王宮の小姓(ペイジ)があたしの前に迎えに来たから、どうやら本当だったらしい。

「ええっ…あたし、なんの身分もないんですけど」
「貴女様は先々代女王陛下の御息女、アリスティア王女殿下の養女でいらっしゃいます。なれば、王孫と同じ御立場…ですから、優先的特権のアントレーも適用されます」

小姓が詳しく説明してくれて、ようやく理由が解ったものの…納得はできない。

(ヴァイスさん…竜騎士養成学校編入のために身分を何とかするって言ってたけど…とんでもないことをしてるよね)

あたしは別に、こんなだいそれた仰々しい身分になりたかったわけじゃないけど。
 
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