龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
でも、今はごちゃごちゃ言ってる場合じゃない。
「アリシアさん、しっかり!あなたならできますわ」
「そうですわ。リハーサルなら何度もしたではありませんか」
マリナさんとカリンさんから励まされ、後押しされて一歩を踏み出す。
「ありがとう……マリナさん、カリンさん。行ってきます…!」
みんなが頑張って整えてくれたこの機会(チャンス)……絶対無駄にしたくはない。
でなければ、生まれもわからない。誰の子どもかもわからないあたしが女王陛下に拝謁する機会なんて、一生なかった。
先に手にはめたグローブ(手袋)を外し、小姓に先導されて絵画の間を通り、さらに謁見の間につながる長い広間を進む。王宮内でも限られた人しか足を踏み入ることを許されない、豪奢で荘厳な雰囲気に圧倒されるけど。呼吸を整えて、おばあさまに特訓された歩き方を意識する。
衛兵が立ち並ぶ柱の間を抜け謁見の間前に到着すると、小姓に渡した記名カードが係官へ渡され、係官によってあたしの名前が読み上げられた。
「アリスティア王女殿下がご養女、アリシア・ブルーム様御入来です」
そうして、謁見の間へ足を踏み入れた。
長過ぎる緋色の絨毯をゆっくりゆっくり踏みしめながら、後ろの王室係官にぶつからないように注意する。
謁見の間はやや小ぶりの部屋ではあったけど白い大理石が使われ、上質な絨毯や見事な細工のシャンデリア等、贅を尽くされている。
数十人の王室関係者が玉座に座られた女王陛下を囲まれるように立っていた。